第10話「卒業と旅立ち」
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三月。春の風が、校舎の桜をそっと揺らす。
瑞樹学園の卒業式──
涙と笑顔が交錯する、四人の「秘密のシェアハウス」の第一章に幕が下りる日。
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葵蘭は、芸能界への進出を決意した。
大学進学ではなく、女優の道を選んだその背中には、もう迷いはなかった。
壇上で卒業証書を受け取るとき、客席の健太と目が合う。
彼は大きく頷き、そっと唇を動かした。「おめでとう。」
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健太は、あの日決断した海外ロケに出発する前日だった。
彼もまた、卒業式を最後に、しばらく日本を離れる。
彼の心には、不安よりも期待と使命感があった。
──世界に通用する俳優になる。その決意は、すでに固かった。
放課後、校門で葵蘭にそっと言った。
「俺、必ず帰ってくるから。待っててくれる?」
葵蘭は涙をこらえ、笑顔で返した。
「待ってるよ。ずっと。」
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舞は、地元の国立大学に進学することを選んだ。
スポーツマネジメントを学び、傑を支えるだけじゃなく、自分の夢も叶えるために。
「支えるだけの人生なんて、やめたの。私は、私の未来をちゃんと歩く。」
と、自分の答えを両親にも、傑にも堂々と伝えた。
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傑は、卒業式の翌日にJリーグの開幕戦を控えていた。
代表候補としての注目の中、舞との婚約もまだ“秘密”のまま。
だが、迷いはなかった。
「結果を出して、いつか舞とのことも堂々と世間に言えるようになる。」
その夜、シェアハウスのリビングで、彼は舞の手を取り、静かに言った。
「卒業おめでとう。舞の夢が叶うように、俺も本気でやる。」
舞は、彼の手をぎゅっと握り返した。
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そして卒業式の夜、シェアハウスの屋上で四人は再び集まった。
「これからは、それぞれの場所で、それぞれの夢に向かって走っていく。でも……」
葵蘭が口を開く。
「この場所、この時間、この仲間が、私の原点だから。」
「たとえ離れても、シェアハウスは私たちの“家”だから」舞が続けた。
健太が小さく笑って言った。
「俺たち、また絶対にここに戻ってくるよな。」
傑は、夜空を見上げながら言う。
「ああ、再会を“約束”しよう。次に集まる時は、全員、夢に一歩近づいた姿で。」
四人は手を重ねる。
その瞬間、風が優しく吹き、桜の花びらが夜空に舞った。
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それは、夢への旅立ち。
それぞれの道を歩む4人の青春が、今ここに、一つの終わりを迎える。
しかし──
物語は、まだ終わらない。
第1章【高校編】 完
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