表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘密のシェアハウス【大型長編版】  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
【特別編⑴】(葵蘭&健太 舞と傑視点)
108/138

『ー 結婚の先にあるもの ー』



第一章:はじまりの生活(葵蘭と健太)


結婚して半年。都内の静かなマンションの一室で、葵蘭と健太は新婚生活を送っていた。


朝は葵蘭が先に起きる。

寝ぼけ眼の健太を横目に、丁寧に朝食を作り、彼のためにコーヒーを淹れる。


「今日の撮影、午後からだよね?」

「うん。でも企画の書き起こし、今朝中にやらないと」


そんな会話を交わしながらも、どこかぎこちなさが残っていた。

健太は映像制作会社のディレクターに昇格し、帰宅は日付を超えることも増えた。

葵蘭も、モデル業と編集者としての二足のわらじで忙しくしていた。


──幸せなはずの生活。だけど、何かがずれていく。


ある晩、健太が疲れた様子で帰宅すると、リビングには葵蘭の書き置き。


「先に寝てます。冷蔵庫にスープあります」


シンプルな文字。それだけなのに、胸がチクリと痛んだ。



第二章:交わらない夜(舞と傑)


舞と傑は郊外の小さな一軒家に住んでいた。

休日には家庭菜園をいじり、夜は一緒にワインを飲みながら映画を観る。そんな穏やかな生活。


だけど、舞の心には小さな不安が芽生えていた。


「ねえ、傑。最近、曲作りどう?」

「まあまあ。今日もレコーディングあって、少し遅くなるかも」


傑は音楽スタジオでの仕事に没頭し、家でもヘッドホンをつけたままのことが増えていた。

舞は小学校の担任として、子どもたちの成長を支えながらも、誰にも言えない孤独を抱えていた。


──私たち、夫婦って呼べるのかな。


夜、傑の帰りを待つリビングで、ひとりぼっちのワイングラスが、冷たく光っていた。



第三章:すれ違いの中で(葵蘭と健太)


ある日、葵蘭が出版社の仕事で地方出張になった。

帰ってきたとき、健太はリビングでうたた寝していた。


彼のそばに、女性の名前が記された名刺。

葵蘭はふとそれを拾い上げる。


「この人……誰?」


健太は慌てて起きて、何でもないと弁明したが、その表情に自信がなかった。


「信じてる。でも……疲れるね、全部が」


葵蘭の言葉には、怒りよりも哀しみが滲んでいた。

忙しさを言い訳に、言葉を交わさなくなったふたり。

それでも手を離したくないと思うのは、きっと愛が残っている証だった。



第四章:沈黙と対話(舞と傑)


ある夜、舞が思い切って切り出した。


「傑、今日、ひとつ相談があるの。……わたし、妊娠してるかもしれない」


傑の顔が驚きに染まり、次第に緊張に変わる。

「……それって、本当?」


「まだ確定じゃない。でも、怖かったの。もし、あなたが望んでないって言ったらどうしようって」


沈黙。

舞の目に涙がにじむ。


だが、傑は優しく手を取り、ゆっくりと頷いた。


「俺は、何があっても君と生きていきたい。子どもがいてもいなくても、君がそばにいればそれでいい」


静かに涙をこぼした舞。

ようやくふたりの心が、同じリズムで鼓動を刻み始めた瞬間だった。



第五章:結びなおす手(葵蘭と健太)


クリスマスイヴの夜。

葵蘭は、仕事帰りにイルミネーションをひとり見上げていた。


そこに、健太が息を切らせて現れる。


「蘭……遅くなった。話したいことがある」


彼の手には、小さな箱があった。

「もう一度、君と未来をやり直したい。忙しさにかまけて、君の不安にも気づけなかった。……でも、今度は見失わない」


箱の中には、新しいペアリング。

「これ、結婚指輪の“次”じゃない。これからをもう一度、誓う指輪だ」


葵蘭はその場で彼に抱きついた。

涙が頬を伝い、言葉より先に心が動いた。



第六章:家族のかたち(舞と傑)


年が明けてすぐ、舞の妊娠が確定した。

傑はスタジオの仕事を少し減らし、家にいる時間を増やした。


ふたりで育児グッズを見に行き、名前を考え、夜は胎動を感じながら語り合う。

「この子が大きくなったら、あのシェアハウスに連れて行こうか」


「あそこがあったから、私たち出会えたんだもんね」


四人が共に過ごした日々が、やがて次の世代へと受け継がれていく。



エピローグ:絆は変わらず、そこに


春。再び、あのシェアハウスに四人が集まった。

今度は、少し大きくなったお腹の舞と、互いに寄り添う葵蘭と健太。


ソファに座って、昔話に花を咲かせる。

だけど、誰の目にも、それぞれの困難を乗り越えてきた確かな絆があった。


「きっと、またいろんなことがある。でも、大丈夫。だって、私たちだから」


蘭の言葉に、全員が頷いた。


未来は、誰にもわからない。

でも、この絆だけは、決して揺るがない――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ