『ふたつの誓い』
プロローグ
春の陽射しがやわらかく降り注ぐ休日の午後。
シェアハウスに再び集まった四人は、静かにテーブルを囲んでいた。そこには、ふたつの小さな箱と、一枚の手紙。
葵蘭が目を細めて微笑み、舞は頬を赤らめて傑の手をぎゅっと握っている。健太は少し照れたように笑って、何かを切り出そうとしていた。
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第一章:再会、そして予感
大学卒業後、それぞれの道を歩み始めた4人。
葵蘭は出版社で働きながらも、週末はモデルの仕事を続けていた。健太は映像制作会社に就職し、現場を飛び回る日々。
一方、舞は小学校教諭として念願の教師生活を始め、傑は音楽関係のスタジオでアシスタントをしながら、曲作りにも携わっていた。
それでも彼らは、特別な日にはシェアハウスに集まっていた。
「ここは、わたしたちの原点だから」――葵蘭のその言葉が、皆の中に残っていた。
そんなある日。
健太が「ちょっと話がある」と言い出し、四人の再会が決まる。場所は、あのシェアハウス。
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第二章:健太からの手紙
再会の日。テーブルの上に置かれた封筒は、健太が用意したものだった。
中には、手紙が一枚と、指輪の箱がふたつ。
健太の手紙には、こんな言葉が綴られていた。
蘭と出会って、俺は変われた。
自信のない自分を受け止めてくれて、ありのままでいいと思わせてくれた人。
これからも、彼女の隣で、彼女を笑わせたいと思う。
その場で、健太は静かに蘭に向き直った。
「葵蘭――結婚しよう。俺と、ずっと一緒にいてください」
蘭は目を潤ませ、無言でうなずいた。
その瞬間、舞が小さな歓声を上げて拍手した。
「もう、やっとだよ!待ってたよ〜!」
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第三章:舞の決意
その空気の中、舞がふと立ち上がった。
「私も……ずっと言いたかったことがあるの」
傑が「え?」と驚いた表情で見つめる中、舞は手を取り、自分の心をまっすぐに伝える。
「私は、傑と出会って、愛することの意味を知ったの。
これからも、辛いときも楽しいときも、あなたと一緒に乗り越えていきたい」
すると傑は、小さな箱をポケットから取り出した。
「……それ、俺のセリフだったのに」
ふたりもその場で、婚約を誓った。
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最終章:ふたつの誓いと、未来へ
こうして、同じ日に、同じ場所で、ふたつのカップルが新たな一歩を踏み出した。
シェアハウスのリビングに飾られた写真立てには、笑顔で写る四人の姿。
彼らの物語はまだ続く。
結婚、家族、夢――。
未来に向けて、ふたつの誓いが静かに、でも確かに、交わされたのだった。




