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秘密のシェアハウス【大型長編版】  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
【長編特別外伝】修斗と苑香の「秘密の結婚」
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特別外伝:―修斗と苑香の秘密の結婚から五人の命に囲まれて-





第一章:卒業と誓い


高校の卒業式の夕暮れ、校舎裏にある桜の木の下。セレモニーの余韻が残る校庭から少し離れた場所で、修斗は苑香に静かに向き合っていた。


「苑香、俺と結婚しよう」


その言葉に苑香の目が大きく見開かれる。けれど、その瞳は揺れることなく、すぐに優しい微笑みに変わった。


「……うん。私も、ずっと一緒にいたいと思ってた」


二人はそっと近づき、初めてのキスを交わす。それはまるで未来を誓い合う印のように、静かで、けれど確かに熱を宿したものだった。


式を終えたその週末、修斗と苑香は家族と信頼できるシェアハウスの同居人だけを呼び、簡素ながらも真心のこもった「秘密の結婚式」を挙げた。指輪も誓いの言葉も、本物だった。


第二章:芸能界という舞台


大学進学をせず、二人は共に芸能界の道へ進む。オーディションに通ることもあれば、落ちることもあった。だが、ふたりは支え合いながら日々を重ねていった。


「修斗、明日の撮影早いんでしょ?私、お弁当作るね」


「ありがとう。でも、ほのかの方が大変だろ?最近、モデルの仕事も増えてるし…」


「ふふ、それでも、あなたに美味しいご飯食べて欲しいの」


そんな日常が、ふたりにとってはかけがえのない宝物だった。


第三章:命の気配


ある夜、苑香は妙な吐き気と微熱に気づいた。最初は風邪かと思ったが、数日経っても症状は変わらない。修斗とともに訪れた産婦人科で、医師は優しい声で告げた。


「おめでとうございます。妊娠、6週目です」


診察室の中で言葉を失う二人。けれど、目と目が合った瞬間、じわりと涙があふれた。


「ほのか……俺たちの子、だね」


「うん……嬉しい……修斗……ありがとう……」


その日、ふたりは帰り道の公園でベンチに座り、何度も唇を重ねた。まだ誰にも言えない秘密を、唇で、体温で、確かめ合うように。


第四章:静かな休息


妊娠が進み、苑香は少しずつ身体に変化を感じるようになった。撮影の合間に気分が悪くなり、スタッフに気づかれそうになることも。


「もう、そろそろ限界かも……」


修斗も同じ思いだった。事務所と相談し、苑香はSNSで活動休止を発表。理由は「体調不良」。だが、その真相を知るのは、ごくわずかな人間だけだった。


数ヶ月後、苑香は病院に入院することになる。産婦人科の女性医師と、付き添いの女性看護師だけが、二人の秘密を共有していた。


「赤ちゃん、元気ですよ。母体も安定しています」


「……ありがとう。ほんとにありがとう、先生……」


修斗は病室に通い、苑香と語り合い、そして時折キスを交わした。


「俺、ずっとそばにいる。君と、子供と、一緒に生きる」


「うん……それが一番の幸せ……」


第五章:出産と奇跡


陣痛が始まったのは、ある春の朝だった。修斗は撮影を早退し、病院へと駆けつける。


「修斗……来てくれて……」


「当たり前だろ、俺は君の夫で、父親だ」


何時間もの苦しみの末、苑香は男の子を出産。病室に響いた産声に、ふたりは涙を流した。


「ようこそ……俺たちのところに……」


「名前、考えてたよね……“蒼空そら”に、しよう」


第六章:芸能界の現実


出産から数日後、修斗は再び撮影現場へ戻る。苑香の代わりに、家族を支える覚悟で仕事をこなす。


ある日の昼、事務所社長の黄金こがねから声をかけられる。


「修斗くん、恋愛ドラマの主演オファーが来てる。どうだ?」


「……申し訳ありません。苑香以外の“恋人”や“夫婦役”は、お受けできません」


「ほう……彼女との関係、守りたいんだな」


マネージャーも横でうなずいた。「彼は、もう家庭を持ってますから」


第七章:3人の未来


苑香が退院し、子供とともに新しい日々が始まる。二人の部屋は、小さな笑い声と泣き声に包まれる。


「蒼空、笑った……!」


「ふふ、君に似てるね」


「いや、ほのかに似てる。強くて優しくて……」


仕事と育児の合間、3人で出かける公園、夜中のミルク、SNSに載せられない幸せ。芸能界という表の顔の裏に、静かに、でも確かに存在する「家族」という絆。


そして、ふたりは心の中で誓っていた。


いつか、すべてを公表できる日が来たら——その時は、堂々と「家族」として世界に胸を張ろう、と。



To be continued…


第八章:家族のリズム


退院してからの日々は、まるでジェットコースターのようだった。初めての育児、慣れないおむつ替え、夜泣き、ミルクのタイミング。だけど苑香も修斗も、一度も「疲れた」とは言わなかった。


「修斗、蒼空の沐浴お願いしてもいい?」


「おう、任せろ! 俺、この小さな背中洗うの上手くなった気がする」


「ふふ、毎日練習してるからね」


洗面所から響く蒼空の笑い声は、ふたりの心の疲れを一瞬で癒してくれた。


苑香はSNSでの投稿を最小限にしながら、たまに手料理や風景写真を載せていた。ファンたちは「元気そうで安心した」とコメントするが、誰もその写真の外に小さな命があることには気づいていなかった。



第九章:ふたたび表舞台へ


産後3ヶ月、苑香は少しずつ体調を整え始めた。完全復帰ではないものの、事務所と相談し、モデルの仕事を少しずつ再開することに。


「蒼空が少し大きくなったら、また撮影現場に連れて行こうかな」


「いいね。俺も今ちょうど次の撮影が東京近くだし、合間に会いに来れる」


そんな矢先、苑香にある有名ファッション誌から、復帰後初のカバーモデルのオファーが舞い込む。


「えっ、私が……? 本当に……?」


「ええ。あなたの“今”を映したいって、編集長が言ってたわ」


「“今”……私が母親になった今、か……」


一晩悩んだあと、苑香は頷いた。

それは、秘密を公にする覚悟ではない。けれど、自分が「母親としても女優・モデルとしても生きていく」決意だった。



第十章:告白の時、まだ来ず


芸能界では依然として、苑香と修斗は「仲の良い同じ事務所のタレント」として見られていた。


イベントや番組で共演しても、視聴者は気づかない。


けれど、現場でふと交わす目線、さりげない笑み、ほんの一瞬の沈黙の中に、深い絆が滲んでいた。


ある日、バラエティ番組のオファーが来る。共演者との恋愛トーク企画だった。


「修斗、出演しても大丈夫? 相手は若手の女優さんだって」


「…断ったよ。“既婚者です”って言うつもりはないけど、俺の気持ちは君だけだから」


苑香は修斗の背中に抱きつき、そっと囁いた。


「ありがとう。いつか、全部話せるといいね」



第十一章:蒼空、初めての歩み


蒼空が一歳を迎えたある春の日、苑香がベランダで洗濯物を干していると、部屋の奥から修斗の叫び声が聞こえた。


「ほのかっ! ほのか!! 来て!!」


慌てて部屋に戻ると、そこには、小さな足で数歩だけ立ち上がり、よちよちと歩く蒼空の姿が。


「……歩いたの? 今、ほんとに?」


「うん! ほら、またこっち来い、蒼空!」


修斗が手を広げると、蒼空はまた一歩、また一歩。


苑香は口元を手で押さえながら、ぽろぽろと涙をこぼした。


「……うそ、こんなに早く……すごい……すごいよ……」


「こいつ、やるな……俺たちの子だな」


その夜、3人はリビングで寄り添いながら、何も話さず、ただ静かに時間を過ごした。


蒼空の小さな寝息が、部屋いっぱいに響いていた。



第十二章:ふたりが選ぶ未来


2025年初夏。修斗には大型映画の主演が決まり、苑香には復帰後初のドラマの話が来ていた。


そしてある日、社長の黄金が、ふたりに静かに言った。


「そろそろ…すべてを話す時が来てもいいんじゃないか?」


沈黙。


苑香は修斗と目を合わせ、ゆっくりと首を振った。


「今はまだ、その時じゃないです。でも……」


修斗が言葉を継ぐ。


「けど、俺たちはずっと“本当の家族”として、生きてきた。それは誰が知らなくても、絶対に揺るがない」


黄金は笑みを浮かべた。


「いい答えだ。…その時が来たら、俺が一番最初に記者会見開いてやるよ」


ふたりは笑った。


その夜、蒼空は修斗の胸の上で眠り、苑香はその隣で彼の指に指を絡めた。


「修斗、ありがとう。家族になってくれて」


「俺こそ。君と蒼空が、俺のすべてだよ」


そして、もうすぐ来る“未来”に、ふたりは確かな光を感じていた。



To Be Continued…(未来編へ)


【未来編:ふたり目の奇跡】


第十三章:恋愛ドラマのオファー


ある夏の昼下がり。ドラマの打ち合わせが終わったばかりの修斗に、マネージャーが急ぎ足でやって来た。


「修斗、主演のラブストーリードラマ、正式にオファーきたよ。しかもヒロイン、苑香さんだって」


「……苑香?」


目を見開いた修斗は、迷う暇もなく頷いた。


「受ける。絶対、受ける。こんな機会、逃したくない」


マネージャーは笑いながらも小声で言った。「ま、夫婦役じゃないけど“実質夫婦共演”ってやつだな」


修斗の胸は高鳴っていた。

芝居の中でも彼女を抱きしめられる。唇を重ねられる。

そして何より、“女優・苑香”と再び真剣に向き合える。



第十四章:台本と、身体の距離


その夜、リビングのソファで二人は並んで台本を読む。


「ここ…ベッドで抱き合うシーン…リアルに見せなきゃダメだよね」


「うん…演技でも、きっとファンは見てる。でも…大丈夫だよ。私たち、本物だから」


言い終えると、ふたりは視線を合わせる。自然に身体が近づいて、修斗が苑香の髪をそっと耳にかける。


「じゃあ、リハーサルしよっか。…“夫婦の顔”は見せない。ちゃんと“役”として向き合おう」


「…うん」


その夜、ふたりは何度も唇を重ねた。

触れるたびに台詞が消えていくほどに、本物の熱が溢れていた。


苑香の背中に修斗の手が回り、服の裾が少しずつ上がる。けれども、そこにあるのは“役としての接触”以上に、心を通わせる「信頼」だった。


「…このキスは、脚本より深いね」


「俺たちは、毎日が本番だからな」



第十五章:ふたたびの命


ドラマ撮影が順調に進む中、苑香の体に再び、あの感覚がよみがえる。吐き気。眠気。そして、胸の奥の“確信”。


修斗と再び訪れたのは、前回と同じあの産婦人科。


「苑香さん、修斗さん、おめでとうございます。妊娠、8週目です」


前回と同じ女医の笑顔に、苑香は思わず涙ぐんだ。


「…また、ここに戻ってこれて、嬉しいです」


「ええ。母体も順調ですし、赤ちゃんも元気ですよ」


修斗は診察室の中で苑香の手を握り、ゆっくりと唇を重ねた。


「ありがとう。俺をまた“父親”にしてくれて」



第十六章:再び訪れる“活動休止”


再び社長の黄金に相談する修斗と苑香。


「…今回もSNSには、“体調不良による活動休止”で報告します」


「なるほど。心配するファンも多いだろうが…前回と同じ医師、同じスタッフなら安心だな」


SNSには「しばらくお休みさせていただきます」の言葉と、青空を見上げた写真。


「また体調悪くなったのかな…?」


「無理しないで…ゆっくり休んでね」


ファンからは温かいメッセージが寄せられる。中には「前回も突然だったし、なんか怪しい…?」という声もあったが、決して悪意のない、純粋な心配だった。



第十七章:蒼空と“妹”


数ヶ月後、苑香は元気な女の子を出産。名前は「花音かのん」。


その日、修斗が蒼空を連れて病室に入ると、彼は満面の笑みで叫んだ。


「パパー! 妹だー! ちっちゃいー!」


「そうだよ、蒼空。君に妹ができたんだよ」


蒼空は慎重に小さな妹の手を触り、ぽつりと呟いた。


「おにいちゃん…になるんだね…」


苑香の目に涙が溢れる。


「うん、蒼空は立派なお兄ちゃんだよ」


その瞬間、家族の絆が一層強く、優しく結ばれた。



第十八章:秘密のまま、でも確かな幸福


出産後、再び静かな日常が戻る。

修斗は蒼空と花音を抱きしめながら仕事へ向かい、苑香は子供たちと一緒にゆっくりと過ごす。


蒼空はすっかりお兄ちゃんらしくなり、妹を泣かせないようにそっと絵本を読んであげていた。


SNSではまだ「秘密の家族」のまま。だが、その秘密は誰かに隠すためではなく、「ふたりだけの誓い」として守られている。


苑香はふとつぶやく。


「ねぇ修斗…いつか、この子たちと一緒に表舞台に立てたら…って思うの」


「うん。公表する日は…“俺たちが家族として一番強くなれた時”だな」


夜、三人で川沿いを散歩する。風は心地よく、蒼空は父と母の手を握りながら歩く。


その後ろには、抱っこ紐の中で眠る花音。


この世界が知らない“本物の家族”の姿が、そこにあった。



To Be Continued…


最終章:真実の告白と、光の祝福


第一節:告白の瞬間


それは、ドラマ最終回の放送翌日だった。

SNSで突如、苑香と修斗が同時に投稿をアップする。


「実は、私たちは高校卒業と同時に結婚していました。ずっと秘密にしていて、ごめんなさい」


「苑香と僕は、芸能界に入る前から、夫婦でした。そして、ふたりの子どもがいます。今日まで、この“家族”を守ってきました」


ネットは騒然となった。

だが意外にも、炎上は起きなかった。


「え…あの2人、ほんとに結婚してたの?」

「なんで泣いてるんだろ、幸せな報告なのに…」

「全部演技だと思ってた。でもあれ、本物だったんだ…!」


俳優仲間、共演者、高校の旧友、小中学校の同級生、そして教師たちまでもがSNSやメッセージで言葉を送った。


「あの時の“手をつないで登校”は伏線だったんだね」

「やっぱりあの空気、恋人じゃなきゃ出せないよ」

「おめでとう。これからも、ふたりで歩いてね」


涙が止まらなかった。苑香は、抱っこひもで花音を抱きながら、蒼空と修斗に言った。


「……もう、隠さなくていいんだよね」


「うん。これからは“私たち”で、胸を張って歩こう」



第二節:ふたりの引退、そして育児の日々


数日後、記者会見が行われ、ふたり揃って芸能界引退を発表。

会場の記者たちは言葉を失うほどの衝撃を受けながらも、その堂々たる姿に圧倒された。


「今は、子どもたちとの時間を大切にしたいです」

「でもまた、戻ってこれるように……その日まで、夫婦でちゃんと“生きて”いきます」


完全な引退ではなく、あくまで一時休止——

ファンもそれを理解し、待つことを選んだ。


やがて芸能界から離れたふたりは、地方の静かな街で子育て中心の生活を始める。

蒼空は幼稚園へ、花音は日々すくすくと成長していた。



第三節:復帰、そして歓喜


それから2年と少し——

ある夜、ふたりが同時にSNSを更新する。


「そろそろ、帰ってきます」


「また、芝居をすることになりました。“家族と共に生きる俳優・女優”として」


復帰発表に、ネットは歓喜の声で包まれる。


「待ってた!」

「これでまた、あのふたりの演技が見られるなんて…!」

「今度は家族全員でCMとか出てほしいな」


黄金社長もこうコメントした。


「おかえり。もう、隠すものなんて何もない。堂々と、行こう」


ふたりは少しずつ仕事を再開し、やがて夫婦で家族向け映画に出演するなど活動の幅を広げていった。



第四節:本当の結婚式


芸能界復帰から1年後。

ふたりは一つの大きな決断をする。


「…公の場で、ちゃんと式を挙げよう」


これまで誰にも知られず行った秘密の結婚式——

その記憶は温かく、愛おしく、ふたりだけの宝物だった。


だが今度は、皆に祝ってもらいたい。


子どもたちも一緒に参列できる結婚式。

花音はリングガールに、蒼空は立派なタキシードを着て、両親の手を引いてバージンロードを歩く。


大聖堂の大きな扉が開くと、光が差し込む。

修斗はタキシードに身を包み、

苑香は白無垢とウェディングドレスを合わせた和洋折衷の姿で現れた。


列席者の拍手、そして涙。

共演者、旧友、家族、そして教師たちが、笑顔でふたりを見守る。


「苑香さん。あなたを妻として、これからも守り抜きます」


「修斗さん。私は何度でもあなたを選びます。今までも、これからも」


指輪交換。

そして、誓いのキス。


鐘が鳴り響く大聖堂に、蒼空と花音の笑い声が広がる。



終幕:家族という真実


式の後、帰り道。

手をつないだ四人が並んで歩く。苑香が空を見上げてつぶやいた。


「秘密だった日々も、全部、大事だったね」


「うん。だからこそ、今があるんだと思う」


「次は……5人目、かな?」


「えっ……まさか……」


苑香が微笑む。

修斗が目を丸くして、そしてすぐに優しく彼女の手を握る。


「ならまた、全部を愛するだけだ」


光に包まれながら、家族は歩き出す。


——そして物語は、「続いていく」。


【特別外伝:修斗と苑香――五人の命に囲まれて】


序章:あの日の「予感」


教会での結婚式から数ヶ月後、春の終わり。

苑香が朝からそわそわしていた。体が重く、眠気もひどい。


「もしかして……」


不安と期待を胸に、ふたたび訪れた産婦人科。

笑顔の女医が、懐かしい口調で告げる。


「苑香さん、おめでとうございます。妊娠されていますよ。三人目ですね」


——また、新しい命が、この世界に舞い降りた。



第一章:三人目・冬翔とうかの誕生


その冬、苑香は元気な男の子を出産する。名前は「冬翔とうか」。

“冬の空を翔ける希望”という意味を込めて。


兄の蒼空、妹の花音に見守られ、冬翔はすくすくと成長していく。

よく笑う子で、兄姉に遊ばれるたびに「キャッキャ」と声を上げる。


修斗は彼の頬にキスをしながらつぶやく。


「この家、どんどん賑やかになるな」



第二章:四人目・陽葵ひまりの誕生


冬翔が2歳になる頃。苑香はまた妊娠していることがわかる。

出産も慣れてきた…というわけではなかったが、心の余裕は確かにあった。


やがて誕生したのは、女の子。名前は「陽葵ひまり」。

“太陽のように明るい向日葵”のように、人懐こい笑顔を見せる子。


「パパ、ママ、あったかいのーだいすきー!」と小さな声で叫ぶひまりに、家族全員が骨抜きになった。



第三章:五人目・月詩つくしの奇跡


そして——まさかの五人目。

「まさか…最後かな」と笑い合ったふたりだったが、神様はまた贈り物を届けてくれた。


五人目の子は、不思議と落ち着いた静かな女の子。

夜の月を見ながら眠るのが好きで、「つくし」と名づけられた。


月詩つくし——月の詩のように、静かに、心を癒す存在。


苑香がつぶやく。


「五人も……わたしたち、よく頑張ったよね」


修斗がその肩を抱いて、そっと囁く。


「頑張ったのは、君だよ。俺は、毎日感謝してる」



第四章:七人家族の風景


朝のキッチンは戦場だ。

蒼空がトーストを焦がし、花音が着替えに悩み、冬翔とひまりが「ママだっこー!」と取り合い、つくしはおとなしくそれを眺めている。


苑香は笑いながらエプロンを直し、修斗が全員の弁当を詰めながら歌を口ずさむ。


「ねぇ、これが幸せってやつかな?」


「うん、まちがいない」



終章:この世界のどこかに


修斗と苑香は、すでに“伝説の夫婦”と呼ばれていた。

引退と復帰、秘密の結婚と公開、そして五人の子どもたちと共に生きる姿が——多くの人の心に光を灯していた。


誰かが言った。


「完璧じゃないのに、なんでこんなに眩しいんだろう」


それはきっと、隠し事も苦しみも乗り越えてきたから。

嘘のない、全てを“愛した”人生だったから。


苑香が、庭の芝生に寝転ぶ子どもたちを見つめながら、修斗に言う。


「ねぇ、人生ってさ——」


「うん?」


「案外、すごい物語になるね。私たちみたいに」


修斗が笑う。


「だろ? これはもう、映画じゃなくて“伝説”だよ」


七人の家族が笑う、ひとつの家。

それは、誰にもマネできない、修斗と苑香だけの“奇跡の物語”。


——そして物語は、いつまでも続く。


―最終完結―

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