長編外伝:修斗と苑香の「秘密の結婚」⑵
第一章:卒業と誓い
高校の卒業式の夕暮れ、校舎裏にある桜の木の下。セレモニーの余韻が残る校庭から少し離れた場所で、修斗は苑香に静かに向き合っていた。
「苑香、俺と結婚しよう」
その言葉に苑香の目が大きく見開かれる。けれど、その瞳は揺れることなく、すぐに優しい微笑みに変わった。
「……うん。私も、ずっと一緒にいたいと思ってた」
二人はそっと近づき、初めてのキスを交わす。それはまるで未来を誓い合う印のように、静かで、けれど確かに熱を宿したものだった。
式を終えたその週末、修斗と苑香は家族と信頼できるシェアハウスの同居人だけを呼び、簡素ながらも真心のこもった「秘密の結婚式」を挙げた。指輪も誓いの言葉も、本物だった。
第二章:芸能界という舞台
大学進学をせず、二人は共に芸能界の道へ進む。オーディションに通ることもあれば、落ちることもあった。だが、ふたりは支え合いながら日々を重ねていった。
「修斗、明日の撮影早いんでしょ?私、お弁当作るね」
「ありがとう。でも、ほのかの方が大変だろ?最近、モデルの仕事も増えてるし…」
「ふふ、それでも、あなたに美味しいご飯食べて欲しいの」
そんな日常が、ふたりにとってはかけがえのない宝物だった。
第三章:命の気配
ある夜、苑香は妙な吐き気と微熱に気づいた。最初は風邪かと思ったが、数日経っても症状は変わらない。修斗とともに訪れた産婦人科で、医師は優しい声で告げた。
「おめでとうございます。妊娠、6週目です」
診察室の中で言葉を失う二人。けれど、目と目が合った瞬間、じわりと涙があふれた。
「ほのか……俺たちの子、だね」
「うん……嬉しい……修斗……ありがとう……」
その日、ふたりは帰り道の公園でベンチに座り、何度も唇を重ねた。まだ誰にも言えない秘密を、唇で、体温で、確かめ合うように。
第四章:静かな休息
妊娠が進み、苑香は少しずつ身体に変化を感じるようになった。撮影の合間に気分が悪くなり、スタッフに気づかれそうになることも。
「もう、そろそろ限界かも……」
修斗も同じ思いだった。事務所と相談し、苑香はSNSで活動休止を発表。理由は「体調不良」。だが、その真相を知るのは、ごくわずかな人間だけだった。
数ヶ月後、苑香は病院に入院することになる。産婦人科の女性医師と、付き添いの女性看護師だけが、二人の秘密を共有していた。
「赤ちゃん、元気ですよ。母体も安定しています」
「……ありがとう。ほんとにありがとう、先生……」
修斗は病室に通い、苑香と語り合い、そして時折キスを交わした。
「俺、ずっとそばにいる。君と、子供と、一緒に生きる」
「うん……それが一番の幸せ……」
第五章:出産と奇跡
陣痛が始まったのは、ある春の朝だった。修斗は撮影を早退し、病院へと駆けつける。
「修斗……来てくれて……」
「当たり前だろ、俺は君の夫で、父親だ」
何時間もの苦しみの末、苑香は男の子を出産。病室に響いた産声に、ふたりは涙を流した。
「ようこそ……俺たちのところに……」
「名前、考えてたよね……“蒼空”に、しよう」
第六章:芸能界の現実
出産から数日後、修斗は再び撮影現場へ戻る。苑香の代わりに、家族を支える覚悟で仕事をこなす。
ある日の昼、事務所社長の黄金から声をかけられる。
「修斗くん、恋愛ドラマの主演オファーが来てる。どうだ?」
「……申し訳ありません。苑香以外の“恋人”や“夫婦役”は、お受けできません」
「ほう……彼女との関係、守りたいんだな」
マネージャーも横でうなずいた。「彼は、もう家庭を持ってますから」
第七章:3人の未来
苑香が退院し、子供とともに新しい日々が始まる。二人の部屋は、小さな笑い声と泣き声に包まれる。
「蒼空、笑った……!」
「ふふ、君に似てるね」
「いや、ほのかに似てる。強くて優しくて……」
仕事と育児の合間、3人で出かける公園、夜中のミルク、SNSに載せられない幸せ。芸能界という表の顔の裏に、静かに、でも確かに存在する「家族」という絆。
そして、ふたりは心の中で誓っていた。
いつか、すべてを公表できる日が来たら——その時は、堂々と「家族」として世界に胸を張ろう、と。
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To be continued…
【未来編:ふたり目の奇跡】
第十三章:恋愛ドラマのオファー
ある夏の昼下がり。ドラマの打ち合わせが終わったばかりの修斗に、マネージャーが急ぎ足でやって来た。
「修斗、主演のラブストーリードラマ、正式にオファーきたよ。しかもヒロイン、苑香さんだって」
「……苑香?」
目を見開いた修斗は、迷う暇もなく頷いた。
「受ける。絶対、受ける。こんな機会、逃したくない」
マネージャーは笑いながらも小声で言った。「ま、夫婦役じゃないけど“実質夫婦共演”ってやつだな」
修斗の胸は高鳴っていた。
芝居の中でも彼女を抱きしめられる。唇を重ねられる。
そして何より、“女優・苑香”と再び真剣に向き合える。
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第十四章:台本と、身体の距離
その夜、リビングのソファで二人は並んで台本を読む。
「ここ…ベッドで抱き合うシーン…リアルに見せなきゃダメだよね」
「うん…演技でも、きっとファンは見てる。でも…大丈夫だよ。私たち、本物だから」
言い終えると、ふたりは視線を合わせる。自然に身体が近づいて、修斗が苑香の髪をそっと耳にかける。
「じゃあ、リハーサルしよっか。…“夫婦の顔”は見せない。ちゃんと“役”として向き合おう」
「…うん」
その夜、ふたりは何度も唇を重ねた。
触れるたびに台詞が消えていくほどに、本物の熱が溢れていた。
苑香の背中に修斗の手が回り、服の裾が少しずつ上がる。けれども、そこにあるのは“役としての接触”以上に、心を通わせる「信頼」だった。
「…このキスは、脚本より深いね」
「俺たちは、毎日が本番だからな」
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第十五章:ふたたびの命
ドラマ撮影が順調に進む中、苑香の体に再び、あの感覚がよみがえる。吐き気。眠気。そして、胸の奥の“確信”。
修斗と再び訪れたのは、前回と同じあの産婦人科。
「苑香さん、修斗さん、おめでとうございます。妊娠、8週目です」
前回と同じ女医の笑顔に、苑香は思わず涙ぐんだ。
「…また、ここに戻ってこれて、嬉しいです」
「ええ。母体も順調ですし、赤ちゃんも元気ですよ」
修斗は診察室の中で苑香の手を握り、ゆっくりと唇を重ねた。
「ありがとう。俺をまた“父親”にしてくれて」
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第十六章:再び訪れる“活動休止”
再び社長の黄金に相談する修斗と苑香。
「…今回もSNSには、“体調不良による活動休止”で報告します」
「なるほど。心配するファンも多いだろうが…前回と同じ医師、同じスタッフなら安心だな」
SNSには「しばらくお休みさせていただきます」の言葉と、青空を見上げた写真。
「また体調悪くなったのかな…?」
「無理しないで…ゆっくり休んでね」
ファンからは温かいメッセージが寄せられる。中には「前回も突然だったし、なんか怪しい…?」という声もあったが、決して悪意のない、純粋な心配だった。
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第十七章:蒼空と“妹”
数ヶ月後、苑香は元気な女の子を出産。名前は「花音」。
その日、修斗が蒼空を連れて病室に入ると、彼は満面の笑みで叫んだ。
「パパー! 妹だー! ちっちゃいー!」
「そうだよ、蒼空。君に妹ができたんだよ」
蒼空は慎重に小さな妹の手を触り、ぽつりと呟いた。
「おにいちゃん…になるんだね…」
苑香の目に涙が溢れる。
「うん、蒼空は立派なお兄ちゃんだよ」
その瞬間、家族の絆が一層強く、優しく結ばれた。
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第十八章:秘密のまま、でも確かな幸福
出産後、再び静かな日常が戻る。
修斗は蒼空と花音を抱きしめながら仕事へ向かい、苑香は子供たちと一緒にゆっくりと過ごす。
蒼空はすっかりお兄ちゃんらしくなり、妹を泣かせないようにそっと絵本を読んであげていた。
SNSではまだ「秘密の家族」のまま。だが、その秘密は誰かに隠すためではなく、「ふたりだけの誓い」として守られている。
苑香はふとつぶやく。
「ねぇ修斗…いつか、この子たちと一緒に表舞台に立てたら…って思うの」
「うん。公表する日は…“俺たちが家族として一番強くなれた時”だな」
夜、三人で川沿いを散歩する。風は心地よく、蒼空は父と母の手を握りながら歩く。
その後ろには、抱っこ紐の中で眠る花音。
この世界が知らない“本物の家族”の姿が、そこにあった。
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To Be Continued…
最終章 【―引退と、真実の告白―】
第十九章:静かなる引退
苑香が2人目の子・花音を出産してから2年後。
修斗と苑香は静かに、そして確かな決意をもって芸能界から身を引いた。
記者会見もなければ、テレビでの特集もない。
それはふたりが長年守ってきた「秘密」と、愛する子どもたちの未来を守るためだった。
最後のSNS投稿は、それぞれの言葉だった。
◇苑香(元女優・モデル)
「これまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。私は本日をもって、芸能活動から完全に離れる決断をいたしました。理由は、私自身の人生と向き合い、今後はひとりの女性として、母として歩んでいきたいと思ったからです。どうか温かく見守ってください」
◇修斗(元俳優)
「これまで本当にありがとうございました。突然の引退に驚かれた方も多いと思いますが、芸能界での経験は自分にとって宝です。ですが、それ以上に大切な“守るべき日常”が、今の僕にはあります。長い間応援してくださったすべての方に、心からの感謝を」
ふたりの投稿は、たちまち全国で話題になった。
“同時引退”というだけで騒がれたが、本当の理由を知る者は誰もいなかった――まだ、このときは。
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第二十章:そしてある日、動画が投稿された
引退から1年。
ある日、YouTubeに1本の動画がアップされた。投稿者名は「Sho&Hono」。
動画のタイトルは――
『ご報告があります。今まで本当にありがとうございました。』
画面には、カメラの前に並んで座るふたりの姿。
どちらも自然体で、今までの芸能活動中とは違う穏やかな表情をしていた。
「みなさん、こんにちは。苑香です」
「修斗です。今日は……僕たちから、大切なお知らせがあります」
苑香が深く息を吸い、真剣な目で語り始めた。
「私たち、実は――高校を卒業してすぐに、結婚していました」
一瞬、時が止まったような空気。
数秒後、修斗が続ける。
「そして今、僕たちには、2人の子どもがいます。男の子と女の子です」
「これまでずっと、隠してきてごめんなさい。嘘をつくつもりではなかったけど、あの頃の私たちは、芸能の仕事と家庭を両立する自信がなくて…」
「けれど、ようやく今日、こうして本当のことを皆さんに話せる日が来ました」
苑香が小さなアルバムを手に取り、画面に向けて見せる。
そこには、ふたりの結婚式の写真。初めて抱いた蒼空。病院での花音の出産。家族4人で海辺を歩く後ろ姿。
すべてが、“今まで見せなかった本物の人生”だった。
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第二十一章:涙と歓声のコメント欄
投稿からわずか数時間で、コメント欄は数万を超えた。
「え……本当に結婚してたの? でも、おめでとう!!」
「泣いた…ずっとふたりが本物の夫婦だったらいいのにって思ってたから」
「子どもいるの!? しかも2人!? 幸せそうで嬉しいよ…」
「秘密にしてた理由も分かるよ。今はただ、ありがとうって言いたい」
動画はニュースにも取り上げられ、「芸能界を静かに去ったカップルの真実」として全国で報道された。
だが、批判はほとんどなかった。
ふたりの選んだ“静かで誠実な告白”は、人々の心に温かく響いた。
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第二十二章:その後の人生
ふたりは芸能界を完全に離れ、地方の静かな町へ移住していた。
修斗は小さな映画館を経営し、子ども向け映画の上映や親子向けワークショップを開催している。
苑香は、子育てをしながら地元の図書館で子ども向け読み聞かせを行い、地域に溶け込んでいた。
蒼空は小学生になり、妹の花音と手を繋いで毎朝学校に通っている。
兄妹の絆は強く、地元の人々からも「本当に仲のいい家族」として知られていた。
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エピローグ:最後のメッセージ
ある日、修斗がふと苑香に言った。
「……俺たち、もう“隠すもの”は何もないんだな」
「うん。やっと“普通の家族”になれたんだね」
その夜、ふたりは満点の星空を見上げながら、家族4人で手を繋いで歩いた。
その姿に、秘密も、芸能界の喧騒も、もうどこにもなかった。
それはただ――
“本当の幸せ”という光を抱いた、ひとつの家族の物語だった。
⸻
完




