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第9話「迷いと決断」



冬の足音が近づく瑞樹学園。受験、進路、夢──それぞれの現実が四人に静かに、だが確実に迫っていた。



葵蘭は演劇の舞台に出演しながら、大学進学と芸能界入りの狭間で悩んでいた。演技は大好き。でも、家族のように表舞台で生きていくことに、自信が持てなかった。


ある日、稽古帰りのバス停で、健太が静かに話しかけた。


「葵蘭、何を選んでもいい。でも、お前が笑ってる未来を見たい。」


葵蘭はふっと微笑み、彼に小さくうなずいた。


「ありがとう。私、ちゃんと考えてみる。」



健太自身も、決断の時を迎えていた。映画オーディションに合格した彼は、撮影のために長期間海外へ行くオファーを受けていた。


「今ここで挑戦しなければ、一生後悔するかもしれない…」


けれど、その一歩が葵蘭との距離を作ることになると、誰よりも理解していた。



舞は、傑の婚約者として、傍にい続けたいと願いながらも、自分自身の未来に不安を抱えていた。


「このままで、いいのかな…? 傑くんの人生に、私はただ“支える人”で終わってしまう?」


そんな時、葵蘭が声をかけた。


「舞は、舞の人生を歩んでいいんだよ。誰かの後ろじゃなくて、自分の足で立てばいい。」


その言葉は、舞の中の迷いに一筋の光を差した。



傑は名古屋グランパスの主力として活躍する一方、日本代表候補としてのプレッシャーと期待に苦しんでいた。


「結果がすべてだ。チームのため、ファンのため、舞のため──でも、本当は、俺自身のために蹴ってるのか?」


彼の迷いは、ある夜、舞との何気ない会話の中で溶け始めた。


「傑くん、私は“勝つ”あなたより、“笑ってる”あなたの方がずっと好きだよ。」



4人は、進路を決める三者面談の日を目前に、それぞれが“決断”を迫られる。


進む道は違っても、共に過ごした時間、重ねてきた日々、交わした言葉は、彼らの背中をそっと押していた。



夜、シェアハウスのリビングに灯る明かりの下で、4人は静かに未来を見つめていた。


「たとえ違う場所でも、きっとまた交差できるよね」葵蘭が言った。


「ああ。俺たちは、そういう関係だ」傑が応じた。



そしてそれぞれが、次の日、自分の意思で未来を選びに向かった。


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