プロローグ
初投稿です。よろしくお願いいたします。
「……ここ、どこだ?」
目を覚ました瞬間、天城司は見慣れない景色に戸惑った。青々とした木々が生い茂る広大な森。太陽の光が葉の隙間から差し込み、風が心地よく吹き抜けていく。しかし、ここが北海道でも日本のどこかでもないことは、一目で理解できた。
ついさっきまで、彼は札幌のオフィス街にいたはずだ。サラリーマンとして働く傍ら、株式投資で成功し、すでに48億5000万円の資産を築いていた。貯金がこれだけあれば、昔からの夢である田舎に土地を買ってスローライフを送ることも可能だったのに——。
「なんで、いきなり森のど真ん中にいるんだ……?」
頭を抱えながら状況を整理していると、茂みの奥からドスッ、ドスッと何かが地面を踏みしめる音が響いてきた。
「……デカいな」
司の目の前に現れたのは、巨大なイノシシのような魔物だった。
体長は優に3メートルを超え、鋭い牙を持ち、全身が分厚い筋肉と黒い毛に覆われている。普通のイノシシではないことは明らかだった。司は思わず息をのんだが、すぐに冷静さを取り戻した。
「ヤバいけど……逃げられないならやるしかないか」
彼は日頃からサバイバルや狩猟に興味を持ち、護身用に空手も習っていた。さらに、異世界に来た瞬間から異様に身体が軽く、力がみなぎっているのを感じていた。
「試してみるか」
ボアが突進してきた瞬間、司は地面を蹴り、信じられない速度で横に回避。そして、拳を握りしめ——
ドゴォン!
全力で放った一撃が、ボアの頭部に直撃した。そのままボアは地面に叩きつけられ、ピクリとも動かなくなった。
「……あれ?」
あまりの威力に、司自身が驚いた。もしかすると、異世界に転移したことで何かしらの特別な力を得たのかもしれない。
「う~ん…………とりあえず、こいつを解体して食うか」
その後、司は持ち前のサバイバル知識を活かし、ボアの肉を丁寧に捌いた。さらに周囲で野生の鶏5羽と魚4匹を捕まえ、即席の調理場を作る。
焚き火でじっくりと焼き上げると、肉の香ばしい匂いが辺りに広がった。ボア肉は脂が乗っており、噛むたびに旨みがあふれ出る最高の味だった。
「うまいな、これ……」
満足げに肉を頬張っていると、近くの茂みから小さな影が顔を覗かせた。
「……にゃ?」
そこにいたのは、猫耳を生やした可愛らしい少女だった。
歳は10代前半くらいだろうか。ボロボロの服を身にまとい、腹を押さえながらじっとこちらを見ている。
「君。お腹、空いてるのか?」
司が声をかけると、少女は一瞬ビクッとしたが、食べ物の誘惑には勝てなかったのか、コクコクと小さく頷いた。
「じゃあ、遠慮しないで食べなさい」
差し出したボア肉を、少女は警戒しつつもそっと手に取り、恐る恐る口に運ぶ。次の瞬間——
「……っ! にゃっ……!? うまっ……!」
目を輝かせながら、ガツガツと肉を食べ始めた。彼女の小さな手ではとても持ちきれないほどの大きな肉だったが、それでも夢中で食べ続ける。
「そんなに空腹だったのか」
司が苦笑すると、少女は恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、さらに肉を頬張った。
(ジュースとか、デザートでもあればいいんだけどな……)
ふと、そんなことを考えた瞬間——
ピコンッ!
突如として、目の前に青白い光のパネルが現れた。
「……何だ、これ?」
そこには、どこか見覚えのある画面が映し出されていた。
まるで現代のネットショッピングのような画面には、食品から家電、服、雑貨まで、様々な商品が並んでいる。
さらに、画面の隅には**「現在の残高:48億5000万円」**と表示されていた。
「……まじか」
司は自分の目を疑ったが、試しに「オレンジジュース」と検索し、購入ボタンを押してみた。
シュンッ
次の瞬間、目の前にペットボトルのオレンジジュースが現れた。
「うわ、本当に買えた……!」
慌てて履歴を確認すると、残高がしっかりと150円減っている。どうやら、このスキルを使えば異世界でも現代の商品を無限に購入できるらしい。
「これは、かなりヤバいな……」
司は異世界での生き方を改めて考えた。そして、ミアの満足げな表情を見つめながら、ひとつの結論を出した。
「とりあえず、このスキルを使ってスローライフを目指すか」
こうして、俺の異世界スローライフが始まる。
通販系の異世界小説が昔から好きです。