第91話「静寂が、戦場を包み込んでいた」
焦げついた大地。
空はまだ、二人の放った光の余韻を引きずっている。
立ち上がる者はいない。
ただ、二人の戦士が――倒れ伏していた。
エンガそしてゼクス。
両者の体力ゲージは、限界を超えて空になっている。
呼吸も、音も、何もない。
「……決着、ついたのか?」
観客席の誰かが、かすれた声でつぶやいた。
審判団は、緊急審議に入る。
スローモーション、リプレイ、フレーム単位の解析。
最終フレーム――0.008333秒。
そのわずかな差で、ゼクスの体力ゲージが先に0になっていた。
「――勝者、エンガ!」
審判の声が響いた瞬間、観客席は爆発した。
『やったああああああ!!!』
『信じられねぇ……!』
ルミナがモニター越しに涙をこぼす。
「エンガ……勝ったんだ……」
ゼクスの身体は、機能停止の寸前だった。
それでも、エンガの方を見て、微かに笑う。
「……やっぱり……お前、強かったな……」
エンガも、動かない体を無理やり起こしながら、かすれた声で応えた。
「……お前が……いたから……ここまで来れた……」
二人の拳が、かすかに触れ合う。
もう、力は残っていない。
けれど、その触れ合いは――確かに、戦いの証だった。
遠くでサイレンが鳴り響く。
現実世界では、ミサイルの警報と侵攻のアラートが重なり合っていた。
だが、この瞬間だけは――
誰もが、二人の戦士の“誇り”に、心を奪われていた。




