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第88話「2つの獣」

ピノンの顔は蒼白だった。

薄暗いネットカフェの一角、モニターに映し出された地図の上には、無数の赤い点がゆっくりと日本列島へ向かって進行していた。


「……始まったな」


グラウィスが低く呟く。

その隣でピノン――実村は唇を噛みしめながらキーボードを叩いた。


「中国軍の艦隊が……動いた。黄海、東シナ海、南シナ海の三方向からだ。しかもこの航路、完全に“上陸準備”だ。」


月未が息を呑む。


「上陸……?まさか、本気で……」


「本気どころじゃねぇ」


実村は、指先を震わせながらモニターを拡大した。


「アメリカのミサイルが着弾した場合――中国はその直後を狙って進攻するつもりだ。日本の防衛が壊滅すれば、アメリカよりも早く占領できる。要するに、侵略の先取りを狙ってる。」


グラウィスは目を細めた。


「アメリカの核で破壊される前に、“奪う”つもりか……」


「そうだ。アメリカが“削除”の名で核を撃つのも計画的なもの。だが中国はその削除を利用する気なんだ。

どちらも狙ってる――日本そのものを。」


月未は拳を握る。


「……どうして、そこまでして……」


ピノンは、静かに画面を指さした。


「このデータを見ろ。日本のプルトニウムは異常に多い。資源としての価値は、中東の油田にも匹敵する。アメリカも中国も、それを狙ってるんだ。どちらが先に“灰の国”を手に入れるか――その競争だ。」


沈黙が落ちた。

誰もが息を潜めるように、その地図を見つめる。

赤い点が、じわじわと本州へ近づいていた。


グラウィスはゆっくりと立ち上がった。


「……つまり、我々は二つの獣に挟まれているということか。」


実村は苦笑した。


「ああ。アメリカが“正義”を名乗り、中国が“解放”を唱える。だが結局、どちらもやってることは同じだ。

日本という国を――“削除(けす)”だけだ。」


その言葉に、誰も返せなかった。

ただ、モニターの海上に点滅する赤と青の光が、

まるで終末へのカウントダウンのように瞬いていた。

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