第87話「再びのマグマ」
ゼクスは腕を突き出し、虚空を殴る。
「空破!」
目に見えぬ衝撃波が、一直線にエンガへと放たれた。
空気そのものを弾丸に変える、ゼクスの遠距離攻撃。
エンガは咄嗟に身を翻し、間一髪で避ける。
衝撃波が背後の地面をえぐり、岩片と砂が爆ぜるように舞い上がった。
「お前が遠距離なら、こっちだってよぉッ!」
エンガの声が響く。
右腕のレッドブーストが再び唸りを上げ、地面をえぐるように振り抜かれる。
灼熱した拳が通った後、地表が溶けた。
地面がドロドロと溶岩のように変化し、赤黒いマグマが噴き出した。
「火炎音速撃!」
エンガはそのマグマを蹴り上げるように拳を振るい、灼熱の砂礫をゼクスへと投げつけた。
「どうだ、避けてみろよ!」
ゼクスは空気の壁を展開して防ぐが、灼熱の砂が壁をジリジリと焼き削る。
「熱を……利用しただと?」
その瞬間、エンガは閃いた。
マグマが地を覆い、空気が揺らいでいる――そうだ、熱には上昇気流がつく。
それは、ゼクスの“空気操作”を乱す最大の天敵だった。
「なるほどな……お前の空気砲、空気が安定してなきゃ打てねぇんだろ?」
エンガはニヤリと笑う。
「だったら……このフィールドごと、熱くしてやる!」
拳が何度も地を叩き、マグマの帯が広がっていく。
溶けた砂が気流を生み、熱風が舞い上がり、空がぐにゃりと歪む。
ゼクスが焦ったように距離を取る。
「……上昇気流で、弾道が……!」
放った空気砲が、途中で軌道を逸れ、空へと抜けた。
観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。
『地面が……マグマになってる!?』
『ゼクスの弾道が乱れてるぞ!』
エンガは歯を食いしばり、熱で焦げる腕を構え直す。
「これで……お前の遠距離は、封じた!」
灼熱の闘技場。
立っているだけで呼吸が焼ける空間の中、エンガは笑った。
「次は……こっちのターンだ、ゼクス!!」




