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第83話「本当の計画」

ピノンがディスプレイの前で、ゆっくりと息を吐いた。会議室の空気は重く、ルミナ(灯華)や銀二グラウィス、ジーンの顔には疲労と緊張が刻まれている。彼は画面に映る資料を一枚、慎重にめくった。


「これが――本当の計画だ」


皆の視線が一斉に集まる。ピノンの声は静かだが、語る内容の重さがその場を圧した。


「表向きの理由は“ゼクスのウイルス除去”だ。国際社会はそれを名目にして協議を進めている。だが実際には、別の目的がある――」


ピノンは一呼吸置き、言葉を選んだ。


「戦後の経済政策や不平等な条約で、確かに日本の産業は幾度となく揺さぶられてきた。だが、その中で“サブカルチャー”――アニメ、音楽、ゲーム、映像制作といった分野は世界に響く力を持ってしまった。これが、ある勢力には看過できない事態になっている」


銀二の顎が引き締まる。ルミナの瞳が冷たく光った。ジーンが無言で頷く。


「彼らは言う、“削除”が名分だ。だが裏では、日本の“再起不能化”を狙っている。主要なインフラと、創作基盤を破壊し、長年かけて築かれた影響力を一挙に潰す――それが本当の狙いだ」



ピノンの手が震えた。スクリーンには、外交メモや極秘通信の断片が表示される。そこに書かれた論調は冷徹で計算高い。


「つまり核の発射は、ウイルス除去という“建前”で国際決議を正当化し、実行されれば日本の主要都市、産業、文化基盤を一度に瓦解させる計画――一部の勢力による“地政学的な再編”だ」



ルミナが小さく笑うような声を漏らした。


「酷い話ね。文化まで消し去ろうなんて」


ブレイズの拳が机に落ちるような音を立てた。


「自分たちの“尊厳”のために他国を壊すってのか。ふざけんなよ」


ジーンが冷静にモニターへ視線を戻す。


「しかも手口は巧妙だ。ウイルスとサーバーという“見えない脅威”を盾にすれば、国際的な合意も取りやすい。テクノロジーの盲点を突いた、極めて計算された一手だよ」


「これを止めるには――」


銀二が言葉を詰まらせる。ピノンは首を振った。


「止めるのは容易しゃない。だが動くしかない。公にすれば、国際情勢はさらに悪化する。だから俺たちは、裏で出来ることをやる」


その場に沈黙が訪れる。全員が己の役割を静かに受け止めた。目の前のスクリーンに映るのは、もはやゲームの勝敗だけではない。文化と人々の暮らし、未来そのものを賭けた闘いだった。


ピノンは最後に言った。


「エンガがゼクスを止める――それがまず、ここから始まる。手段は選べない。ただ、やるんだ」


窓の外、ほんの一瞬だけ夕陽が顔を出し、彼らの影を長く伸ばした。世界の決断は、もう後戻りできないところまで来ている。

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