第81話「溜める力 vs 放つ力」
轟音と共に、エンガの拳がゼクスへと迫る。
「うおおおおッ!!」
ブーストが全開で発動し、エンガの体を音の壁が包んだ。拳が空を裂き、圧力波がコロシアム全体を揺らす。
だが、ゼクスはその一撃を軽やかに受け止めた。まるで、衝撃そのものを吸い取ったかのように。
「猪突猛進じゃ、エンガお前は俺に勝てない」
エンガは息を荒げながら睨みつけた。
「なんだと?」
ゼクスは一歩下がり、静かに右手を掲げる。
その手のひらに、淡い光が宿った。
「もう隠す必要もないか…俺の魔法――それは、チャージ」
「チャージ……?」
聞き慣れた言葉に、何か嫌な予感を覚えた。
ゼクスは淡々と続けた。
「お前の“ブースト”が、一瞬の爆発力を生み出す能力なら……俺の“チャージ”は、溜めた力を何倍にもして放つ。似ているようで、本質は真逆だ」
その言葉と共に、ゼクスの体から、見たこともないほどの魔力が放出される。
空気が震え、地面が割れた。観客の歓声が一瞬で静まり返る。
「同系統の……力?」
エンガの瞳が揺れる。
“速度”と“蓄積”――二つの力が今、真っ向から衝突しようとしていた。
「さぁ、どちらが“限界”を超えられるか、試してみようじゃないか」
ゼクスの瞳が紅く光る。その姿は、もはや人ではなかった。
――一方そのころ、現実世界。
日本政府の防衛会議室は、すでに混乱の渦中にあった。
「アメリカから!? 核の発射を――?」
「はい、日本上空を通過予定です!」
官僚たちは顔を青ざめさせながらも、すでに“脱出命令”を受け取っていた。
一部の政府関係者は、家族と共にこっそり国外へ逃亡を始めている。
その事実が、瞬く間に裏ルートからグラウィスたちへと伝わった。
コロシアムのブレイズが歯を食いしばる。
「……自分たちが助かればそれでいいのかよ……!」
拳を椅子に叩きつけ、唇を噛む。
「クソが……!」
誰もが“この世界”を救おうとしている中、
“現実の世界”は、静かに終わりへのカウントダウンを始めていた。
そして――コロシアムでは、二つの力がぶつかり合う。
ブーストの閃光と、チャージの轟雷。
その衝突が、この世界と現実、両方の運命を変えることになるとは、まだ誰も知らなかった。




