第74話 「天を突く」
雷鳴が空を裂く
その中心へ、エンガはためらうことなく突っ込んだ。
「――はぁッ!!!」
拳が空を切り裂き、爆風が巻き起こる。
風圧と雷光がぶつかり合い、視界が一瞬、真っ白に染まった。
その中で、エンガの身体から白い“煙”が立ち昇る。
最初、観客はそれを雲だと思った。
だが、エンガが口角を上げて呟く。
「……雲じゃねぇ。湯気だ」
肉体が熱を帯び、魔力が暴走しかけている。
筋肉が軋み、皮膚から立ち上るのは、限界を超えた出力の証。
それでも、エンガは止まらない。
「天候を操るってんなら――それ相応の“燃料”がいるはずだろ」
ライガの視線が一瞬だけ鋭くなる。
“読まれた”――そう悟ったのだ。
嵐を維持するには、尋常じゃない魔力の消費が必要。
空を支配するとは、それだけ“膨大なリソース”を使うことと同義だ。
つまり、どんな神の力でも無限じゃない。
「……面白い。私の空を、力ずくでこじ開ける気か」
雷がライガの身体を走る。
だが、エンガの拳は止まらない。
「燃やして、焦がして、ぶっ壊すまでだッ!」
彼の周囲の湯気が、まるで炎のように渦を巻く。
それは熱気の拳――
「灼拳!!!」
音速の軌跡が嵐を裂き、雷雲を貫く。
轟音が鳴り響く。
空が悲鳴を上げる。
ライガが両手を広げ、暴風を呼び寄せた。
「ならば、天を焦がしてみせろ!」
嵐と灼熱がぶつかり、光と熱が交差する。
雷と炎が混じり、空が割れんばかりの爆発が起こった。
風が吹き荒れ、観客の悲鳴が遠のく。
ただ、そこにあったのは――“拳と空”の激突。
エンガは吠える。
「俺は、天気なんかに屈しねぇッ!!!」
その拳が、雷鳴の中心を貫いた瞬間――
嵐が、ひときわ大きく、光った。




