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第67話 「動き出す現実、迫る第3位」

エンガの試合が終わり、会場が熱気に包まれていた。だが、その空気の中に、どこか不穏なものが混じっていた。

歓声を聞きながら、グラウィスは小型トランシーバを耳にかける。


『……銀二、聞こえる?』


低いが焦った声。ルナ――いや、月未の声だった。


「どうした、月未。声が硬いぞ」


『こっちは、狙われてる。たぶんアメリカ側の工作員……クロウって名前』


「……やっぱり現実にまで動きが出たか」


背中に寒気が走る。これはもう“ゲームの延長”じゃない。

一緒に通話に入ったのは氷残――ジーンだ。


『位置を追われる前に、偽装ログインを大量に仕込んでみた。今のところ追跡は切れてるけども、こっちも時間がないよ』


「なるほど。……それで、ピノン――いや、実村に接触するってわけか」


月未が息を整え、短く答える。


『そう。実村はこの件に関して“何か”知ってる。グラウィス、あなたが一緒に来て』


銀二は短くうなずき、会場裏の廊下を歩き出した。

胸の中に、重たい何かが沈む。――現実が、ゲームを侵食し始めている。


ーーーー


そのころ――「グラディエーターファイターズ」では、エンガが静かに立っていた。

ステージ中央、アナウンスが響く。


『次の対戦――挑戦者として第3位に挑む!』


観客がざわめく。次なる対戦相手の名が告げられた瞬間、空気が一変した。


『登場――第3位、“雷鳴の剣帝”ライガ!』


光が弾ける。雷光をまとった巨剣が地面を砕き、ステージを照らす。

エンガの頬を一筋の風がかすめる。


(……ルナ。お前、どこにいるんだ?)


その胸騒ぎは、単なる試合前の緊張ではなかった。

どこかで現実が、確実に歯車を狂わせ始めている――それを、肌で感じていた。


銀二の声がトランシーバから再び響く。

「月未、氷残、俺は実村に会う。こっちは任せろ。……この国で、奴らの好きにはさせねぇ」


『了解。気をつけて――もう、“ゲーム”じゃ済まないよ』


三人の通信が途切れる。

そして現実と仮想の二つの戦場が、同時に動き出した。


――世界の分岐点となる第3位戦が、今、始まろうとしていた。

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