第62話「鎖と炎、再戦の幕開け」
闘技場の中心。
金色の光が砂地を照らし、観客の歓声が天井を震わせていた。
ついにグラディエーターノヴァ第一試合──エンガ VS 魔鎖のルナ。
二人は中央に立つ。
互いの間に吹き抜ける風が、静寂を破るまでの時間を引き延ばした。
「懐かしいね、エンガ。あの時みたいに、全力で来てよ?」
ルナが微笑む。紫と黒の鎧に絡みつく無数の鎖が、光を反射して妖しく輝いた。
「言われなくてもな……今の俺は、あの時よりずっと速い」
エンガは拳を握り、ブーストエンジンのように魔力を体内で回転させる。
蒼炎が地面を舐め、足元から揺らめいた。
「――スピードブースト!」
瞬間、彼の姿が消えた。
観客の目には、残像すら見えない。
次の瞬間、ルナの背後に現れ、渾身の蹴りを放つ。
ガァンッ!
だが、衝撃は鋼の壁に弾かれたように止まる。
ルナの身体を囲うように、幾重もの鎖が瞬時に展開されていた。
「甘いね。鎖は思うがまま!」
鎖が蛇のように伸び、一本が地面をえぐりながらエンガの腕に絡みつく。
だが、エンガは笑った。
「そいつは――面白い!」
再び加速。鎖が食い込むよりも速く、エンガの身体が回転し、鎖ごと引きちぎる。
会場がどよめく。
ルナは息を吐き、手を掲げた。
「へぇ……力も速さも、両方使えるようになったんだね」
「……そっちこそ。鎖の扱いが別物だ。リモートどころじゃねぇ」
二人は笑い合う。その笑みには、確かな信頼と懐かしさがあった。
だが同時に、心の奥では別の感情が交錯していた。
──ルナは思う。
(今のうちに……伝えられたらいいのに。けど、言った瞬間、私は――)
彼女の背筋を、別の“視線”が刺した。
観客席のさらに上、暗い管理通路の中に黒衣の男が立っていた。
アメリカ政府直属の監視者──コードネームクロウ。
「発見。対象:ルナ・ルミナス。ゲーム内動作パターン一致。実体の追跡を継続」
通信端末に低く報告を入れる。
その眼は冷たく、機械のようだった。
「現実の居所を特定でき次第……抹消を実行する」
闘技場の熱狂の裏で、死神が一人、息を潜めていた。




