第59話「グラディエーターノヴァ宣言」
運営のシステムアナウンスが、全プレイヤーのログイン画面を震わせた。
『――一年に一度の超大型大会の開催をここに宣言する! 出場条件はランキング上位10名! 栄光を掴むのは誰か!』
その瞬間、世界中のプレイヤーが一斉にざわめき立つ。チャットは歓喜と緊張で埋め尽くされ、会場ロビーは大歓声に包まれていた。
――そして。
「……やった……やったぞ!」
エンガの視界に、10位という数字がしっかりと刻まれていた。あの激戦を制したことで、最後の椅子を掴み取ったのだ。背後からパチパチと拍手が響く。
「おめでとうだな、エンガ!」
ブレイズが笑顔で肩を叩いた。ギルドのリーダーらしい堂々とした声。
「10位でギリギリなんて、まじでドラマチックすぎる」
カイが興奮気味に叫び、いつものノリで小型カメラを構える仕草をしてみせる。
「……すごいよ。よくここまで頑張ったね、エンガくん」
ミラも控えめに微笑みながら、そっと祝福の言葉を口にした。その輪の少し外エンガにバレないところで、ログインしていたルミナが腕を組みながら呟く。
「……やっぱり、ここまで行くよね。昔から負けず嫌いだったしね」
エンガは照れ臭そうに頭をかいた。
「みんな、ありがとな……。でも、ここからが本番だ。ノヴァはただの大会じゃない。最強を決める場所なんだ」
その言葉に一同がうなずく。――その夜。
エンガはジムに立っていた。拳を振り抜き、サンドバッグを叩くたびに汗が飛び散る。筋肉が悲鳴を上げても止めない。鍛錬を積み重ねることで、少しでも上位の猛者たちに食らいつくためだ。
「……絶対に負けない。俺は、ここまで来たんだ」
だが、その一方で――。ルミナとギャラクシールオンラインの仲間たちは別の場所で“異常”に気づいていた。通常のフィールドの端に、不可解な「揺らぎ」が生じていたのだ。まるで壁が水面のように波打ち、触れると手が一瞬だけ沈み込む。
「……これ、バグか?」
カイが目を丸くする。
「ただの描画エラーに見えるけど……いや、違う。奥に何かある」
ブレイズが慎重に観察する。
ミラは身震いしながら呟いた。
「ゲームの……壁、のはずなのに……呼ばれている感じがする」
ルミナだけが、その揺らぎを真剣な目で見据えていた。
「……これは、ただのバグじゃない。エンガの戦いと、どこかでつながっている気がする」
エンガが必死に夢へ手を伸ばしているその裏で、確かに“何か”が動き始めていた。




