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第57話「クロスカウンターの果てに」
舞台上に重苦しい空気が流れていた。
足を縛られたままの殴り合いはすでに限界を超えている。観客の歓声も次第にざわめきへと変わり、誰もがこの死闘の行方を見守っていた。
「まだ……!」
妹・ヘナが声を振り絞り、拳を突き出す。だがその一撃は空を切った。次の瞬間、力尽きた身体が崩れ落ちる。
「ヘナッ!」
姉の悲痛な叫びが響いた刹那、エンガは攻めに転じる。だが、姉の瞳は消えていなかった。
「妹の分まで……ここでっ!」
残された力をすべて込め、拳を突き出す。エンガも同時に拳を振るった。
二つの拳が交差し、乾いた衝撃音が舞台に木霊する。
クロスカウンター。
一瞬の静寂のあと、二人の身体が同時に揺らぎ、倒れ込んだ。
観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。審判もすぐには判断できず、試合は映像判定へと持ち込まれた。スローモーションがスクリーンに映し出される。
先に姉の顎へ食い込んだのは──エンガの拳だった。
「勝者、エンガ!」
アナウンスが響いた瞬間、観客席は割れんばかりの声援に包まれた。舞台に横たわるエンガは、気絶していた。観戦席のゼクスはわずかに笑みを浮かべ。
「10位か」
光と音の双子を下した少年は、ついにグラディエーターノヴァ参加券へと足を踏み入れたのだった。




