第54話「足を縛る鎖──知恵でつかんだ一手」
観客席から、割れんばかりの声援が飛ぶ。
だがその熱狂の中心に立つエンガの呼吸は荒く、肩は大きく上下していた。
「はぁ……っ、くそ……!」
視界が揺れる。シューティングスターを追い詰めた代償は重い。今の彼に残されたのは、削られた体力とほんのわずかなブーストだけ。
対するアルとヘナは、合体を解いたことで役割を分担し直し、再び本領を取り戻していた。
「これで終わりよ!」
ヘナがマイクを振りかざし、甲高い音波が放たれる。
同時にアルのダンスによるバフが空間を満たし、双子の連携は一切の隙を見せない。
防御を取る暇もなく、エンガの身体は何度も弾き飛ばされる。
観客席の誰もが「ここまでか」と息を呑んだその時──エンガの目がわずかに光を帯びた。
「……ビームで、地面が……」
焦げた匂いが鼻を刺す。足元の床は、ヘナの光線と音波が重なって熱せられ、まだじわりと赤熱していた。
エンガは苦笑いを浮かべる。
「そういうことなら……やってやるさ」
声を振り絞る。
「──加速!」
残る力をすべて注ぎ込み、拳と足から熱を散らすように叩きつけた。
溶け出した床材が流動し、すぐさま冷えて固まる。
「な……これは……!」
アルが足を引き抜こうとするが、すでに遅い。
「うそでしょ!? 足が……!」
ヘナもまた同じ罠にかかり、舞台の中心で足を縫い止められる。
そしてエンガ自身の足も、同じように床へと固着していた。
三者が鎖でつながれたように身動きの取れない状態──まるでチェーンデスマッチのような光景が広がる。
「これで……本気出せるだろ……!」
エンガは血の味を感じながらも、不敵に笑った。
観客席が一瞬静まり、次いで爆発するような歓声が響き渡った。戦いはまだ続く──だが、均衡はわずかにエンガへと傾き始めていた。




