第53話「最悪の展開──解けた合体、迫る双子」
エンガの拳がシューティングスターの胸元に迫る。
光と音の狭間を突いた渾身の一撃──その瞬間、観客席からどよめきが広がった。
「──っ!」
シューティングスターの身体がぐらりと揺れる。確かにダメージは通った。
しかし次の瞬間、ステージを包んでいたまばゆい輝きが急速にしぼんでいく。
「……時間切れ?」
エンガが息を荒げながら呟いた。そして電子音が響く。
《融合時間、終了》
光が霧散し、残されたのはアルとヘナ。二人の双子が手をほどき、再び別々の存在として姿を現す。
「……っ、やっぱり制限があったか」
エンガの脳裏に安堵が過る。だが同時に、現実が牙を剥いた。アルがダンスで舞い、再びバフの光が仲間に降り注ぐ。
ヘナはマイクを構え、鋭い音波を放つ準備をしていた。
「合体は解除された。けど、私たちが二人でいる限り──」
「あなたを倒すのは時間の問題ですわ!」
二人の声が重なり、エンガの心臓を抉るように響いた。
拳を構えるが、その肩は明らかに重い。シューティングスターを追い詰めるまでに、ブーストも体力も限界に近い。
「……最悪だな」
乾いた笑いが漏れる。
消耗した状態での二対一。考えうる限り最悪の状況──それでも、エンガは拳を下ろさない。
「まだ……終わっちゃいねぇ!」
観客席から、熱狂がさらに高まった。
舞台は新たな局面へ──最悪の2対1が、今始まろうとしていた。




