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第5話:「グラディエーターノヴァへの道」

──勝者、焔牙エンガ


試合終了のアナウンスが、空に高く響き渡った。砂塵の舞う闘技場。その中央で、新道夏炉──焔牙は、深く息を吐いた。拳を握り、全身に残る痛みと疲労感を味わう。


「……はぁ、はぁ……やっべぇな、このゲーム……!」


勝利の余韻に浸る暇もなく、筋肉が悲鳴を上げる。仮想世界とはいえ、肉体の反応は限りなくリアルだった。パンチ一発の重み、避け損ねた衝撃、体力の消耗……どれもが“本物”だ。目の前には、膝をつき、砂の上に崩れ落ちた黒鉄の鎧の男が静かに倒れていた。


(強かった……けど、勝てた。俺の拳が、通じた。)


その時、静かに拍手の音が響いた。


「──見事だ。」


焔牙が振り返ると、黒ローブの男がゆっくりと歩み寄ってくる。


「貴様はこの試練を乗り越えた。これより、正式な闘士として登録する。」


その言葉とともに、空中にシステムウィンドウが浮かび上がる。


---


 『戦闘チュートリアル終了』

 『ランク:F』

 『獲得ポイント:5P』


---


「……ポイント?」


焔牙は手をかざし、表示されたメニューに目を通す。そこにはこのゲームのルールが、簡潔に記されていた。



---


『グラディエーターファイターズ』は、1年に一度開催される最強の闘技大会『グラディエーターノヴァ』への出場を目指し、ポイントを集めてランクを上げていく格闘競技シミュレーションである。


出場条件:1000P以上&ランキング10位以内



---


「グラディエーターノヴァ……?」


焔牙は額に手を当てて考え込む。


(つまり……大会に出場してポイントを稼ぎながら、最終的には“ノヴァ”に出る……って流れか。)


画面に表示された「出場条件:1000P以上」という文字が、やけに重くのしかかる。


「……は?」


たった今、命がけで得たポイントは5P。


「これ、一体何試合やりゃいいんだよ……」


呆れ半分に口を開くと、黒ローブの男が低く笑った。


「すべての試合が5Pというわけではない。大会の規模や格式により、獲得できるポイントは変動する。」


「なるほどな。小さい大会でコツコツ稼いで……でかい大会で一気にポイントを稼ぐ。ってことか。」


「その通り。Fランクの闘士であるお前には、まず“場慣らし”が必要だ。己の実力を証明していくといい。」


「へぇ……」


焔牙はゆっくりと拳を握り、口元に笑みを浮かべた。


(レベルも装備もない……あるのは拳だけ。上等じゃねぇか。)


実力主義──この世界は、まさに彼にふさわしい。


「……で、最初の大会はどこでやってんだ?」


焔牙の問いに、黒ローブの男は目を細める。


「すぐにエントリーできる大会がひとつある。“ストリートクラッシュ”。非公式の地下闘技場だ。」


「非公式?」


「公認大会ではないが、実力者が集う乱戦形式の大会だ。勝ち残れば、50Pが手に入る。」


「50……! 一気に10倍かよ。いいじゃねぇか!」


目を輝かせる焔牙。非公式でルール無用、そして高報酬──そんな言葉に、彼の血は熱くなる。


「ルール無用、実力至上。やってやるじゃんか……!」


拳を軽く振り下ろす。その音が、再び闘志に火をつける。



---


戦いはまだ始まったばかり。名もなきFランク闘士“焔牙”は、いずれ世界最高の舞台**『グラディエーターノヴァ』**に立つ。その拳ひとつで、実力だけで──天下を掴むために。

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