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第46話「ノーヒントの試練」

エンガは息を整えながら、ふと天を見上げた。リングの照明が彼の汗を煌めかせる。心の奥で、あの二人──ゼクスとピノンの顔がちらつく。試合前に何も教えてくれなかったのは、祝福か見限りか。どちらだろうかと、答えの出ない思考が胸をよぎる。


「今回はゼクスもピノンも、何も教えてくれなかった……認めてくれたのか、それとも、」


言葉を切った。続きは自分でも分からない。ただ、確かなのは背中に感じる視線と、ここで勝たねば先へ進めない現実だ。


観客席の一角から、低く艶のある声が響いた。ピノンが肘をついて観戦している。彼の口元がにやりと歪む。


「そうだぜ。この程度をノーヒントで倒せなきゃ、奴らにグラディエーターノヴァの常連には勝てない」


周囲からは含み笑いと小さな波紋が起きる。ピノンの言葉は冷たくも優しい追い打ちだ。教えを与えないのは試金石──あるいは、真価を見定めるための試練。どちらにせよ、エンガの胸には無言の火がともる。


アルとヘナの歌と舞踏が再び高まり、ダメージと強化の輪がエンガを包んだ。彼の体に降りかかる音波とバフの圧は、見る者が感じる以上に重い。だが彼の瞳は揺れない。


(ノーヒントだろうが構わねぇ。自分で考えて、自分でぶち破るだけだ)


エンガの拳がゆっくりとこぶしを締め直す。観客のざわめきが一瞬引き、リングの空気が引き締まる。連続攻撃か、一撃必殺か──選択は自分にある。ピノンの声が背後から突きつけた問いは、いつの間にか彼自身の誓いへと変わっていた。


「来いよ、ジェミニス。全部、受けてやる」


叫びとともに、エンガは前へ踏み出した。音楽と光の渦中で、真正面からの勝負が再び始まる。

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