第45話 「3組の田中」
コロシアムの中央に舞い降りた二人は、互いの背中を合わせるように立ち、観客席へと手を振った。
その仕草はまさにステージ上のアイドルそのもの。
「私たちはジェミニス!知っているでしょう?」
姉・アルが腰に手を当て、挑発するようにエンガへ笑みを向ける。
「へ?えっと……ああ、3組の田中」
思わず出た言葉に、会場がざわめいた。
「だれのこと!?」
アルの声が裏返る。
「アイドルですわ!ア・イ・ド・ル!」
妹・ヘナが怒りを抑えつつ歌うように言葉を重ねた。
「あ……いやうん!知ってるよ知ってる、あれだろ!あのフォーチュンクッキー!」
エンガは慌てて手を振りながらごまかす。
「……だめだこりゃ」
ヘナは肩をすくめ、諦めのため息をついた。
次の瞬間、アルが軽やかなステップを踏み出す。
その足取りに合わせ、虹色の光が広がり、観客席から歓声があがった。
「これが私のダンス!全体バフ、強化のリズムよ!」
彼女の舞に呼応するように、ヘナがマイク型の杖を構える。
「そして私の歌で響かせる!──衝撃のメロディ!」
澄んだ歌声が波紋のように広がり、圧縮された音の衝撃波がコロシアムを揺らした。
「ちょっ、悪かったって!知らなかったのはさぁ!ゲーム情報以外、SNS見ないんだよ!」
エンガは衝撃波をかわしながら、思わず叫ぶ。
「そんなことはどうでもいい!私たちは戦うアイドル!ファンの心も、貴方の心も射抜いてみせる!」
アルとヘナが声を揃える。
エンガは苦笑しながら拳を構え直した。
「……なるほどな。じゃあ、俺は客席の一人として受け止めてやるよ。その歌と踊り、全部まとめてな!」
コロシアムに響く音楽と歓声の中、アイドルユニット双子座の流星と挑戦者エンガの戦いが幕を開けた──。




