第43話 「残り2人」
奈落から這い上がるようにして浮島の戦場に戻ったエンガは、息を荒げながら拳を握りしめた。観戦者たちのシステムチャットは騒然としている。
≪12位・グラウィス、場外敗北≫
≪勝者・エンガ。順位が繰り上がり──12位へ≫
表示が切り替わる瞬間、場内がどよめいた。
「おい、またアイツ勝ったぞ……!」
「鉄壁を砕いて、重力使いまで落とすとか、どんだけだよ」
勝利の余韻に浸る間もなく、エンガの視線は新たなランキングへと吸い寄せられる。残されたのは──11位と10位。彼らを突破しなければ、念願の「トップ10」の門を叩くことはできない。
「……あと二人」
呟いたその時、不意にシステム音が鳴った。
≪プレイヤー:エンガ ランクB → Aに昇格≫
「……ん??俺いつBランクになったっけ???」
思わず声が漏れる。自分でも驚くほど早い昇格だった。ランクAといえば、上位陣に肩を並べる証。格闘ゲーム《グラディエーターファイターズ》のプレイヤーにとって、それは誇りであり勲章だ。
だが、胸の奥にあるのは歓喜よりもむしろ緊張だった。
Aランクになったということは──次から相手にする者たちも同じ土俵に立つ。グラヴィスのようなクセのある強者が、さらに牙を研いで待ち構えているのだ。
「……面白ぇじゃねえか」
頬を叩き、気合を入れ直す。疲労で全身は悲鳴を上げているが、エンガの眼はすでに次を見据えていた。
「待ってろよ……11位、10位。俺が必ず叩きのめして、トップに食い込んでやる」
その背中を、観戦ルームの隅で静かに見つめる影が一つあった。
ルミナ──エンガ=夏路の秘密を知る者。彼女は拳を握りしめ、ただ小さく呟いた。
「……夏路、無茶しすぎないでよ」
だが、彼の目にはもう迷いはない。次の相手を求め、エンガは戦場を後にするのだった。




