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第40話 「動かざること山のごとし」

エンガの体を包んでいた無重力がふっと消える。重力に引かれる感覚が戻り、地面へと足が沈み込むような圧迫感が走った。


「……切れたか」


その瞬間を狙ったかのように、グラウィスが声を張り上げる。


「違うな、貴様を無重力にすると機動力が上がるのは分かった」


次の刹那、地面がうねるように変質し、グラウィスの足元が黒鉄の杭のように沈んだ。まるで重力が凝縮されているかのように、その巨体が大地に固定される。


力場(ハンドレット)(グラビティ)これでどうだ!」


グラウィスが大地と一体化したかのように構えを取る。揺るがぬ山、動かざる壁であった。


エンガは舌打ちしながら拳を構える。無重力が失われ、今や通常の質量と反動を背負う己の拳がどこまで通じるのか。それを試すしかなかった。


「ちっ……なんとか(動かざること)山のごとしってやつか」


思い切り踏み込み、拳をグラウィスの胴に叩き込む。轟音が響き渡り、大気が震える。しかし、グラウィスの巨体は一歩も揺るがなかった。まるで地そのものを殴っているかのような感触。反動に腕がしびれ、足元の土が砕け散る。


「フン……悪くないが、足りん!」


グラウィスは揺るがぬ声で言い放つ。圧倒的な重量。


「鉄のやつと言い、氷の奴といい、防御力特化が多すぎねぇかな…」


エンガは深く息を吐き、わずかに後退する。己の拳が届かぬ壁を前にしても、瞳の炎は消えていなかった。


「……まあいいさ俺のやり方で、その重力(よろい)をはっ倒す!」


グラウィスの足が大地に沈み込み、揺るぎない壁として立ちはだかる。エンガは次の一撃を模索しながら、再び拳を握りしめた。

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