31話:「鉄壁を砕く道」
「氷女と戦って硬いものへの対処はできた……そう思ってんじゃねぇか?」
レイジの声が雷鳴のように響く。
その一言に、エンガの心臓がドクンと跳ねた。図星だった。
「……っ」
エンガは一瞬だけ拳を握りしめる。確かにジーン戦では“氷”を砕く術を掴んだ。それが、鉄にも通じるはず──そう思っていたのだ。
レイジは鼻で笑い、鋼鉄に覆われた拳をゆっくりと構える。
「教えてやるよ。お前が勝てたのは“熱”だ。氷を砕いたわけじゃない。……勘違いすんなよ?」
その言葉は拳よりも重く、エンガの胸に突き刺さった。
(……氷を溶かしただけ。砕いたわけじゃない……)
エンガは思わず舌を打つ。だが同時に、心のどこかで笑みがこぼれた。
「……なるほどな。猪突猛進かと思ったが、見た目で判断しちゃいけないってことか」
レイジの口角がさらに吊り上がる。
「あぁ、そうだぜ? もしかしたら、俺が東大の卒業生かもしれねぇしな?」
「……ははっ! 違いないな!」
一瞬、戦場に似つかわしくない笑い声が響いた。
だが次の瞬間には、鉄拳と肉拳が激突し、火花と衝撃が弾ける。
鉄の腕と、加速で赤熱する拳。
観客席からは歓声が渦巻き、リング全体が揺れるほどの衝撃波が広がった。
「さぁ──氷を溶かすだけじゃねぇ、鉄を砕く力……見せてみろ、ファイター!!」
「上等だ……望み通り俺の拳で鉄ごとぶち破ってやる!!」
互いの拳が再び振り上げられた瞬間、空気は張り詰め、次の一撃に全員の視線が集まるのだった。




