30話:「剛拳の王──鉄をも砕く拳」
「カァァァン!」
ゴングの音が響くと同時に、会場の空気が一変した。
14位の新鋭、焔牙。
そして彼の前に立つのは、歴戦の猛者──剛拳の王・レイジ。
その体格は岩のように屈強で、両腕はまるで戦場に鍛えられた大砲のように太い。
「Cランクが14位まで来たって話題になってたが……お前か」
レイジが口角を上げる。
「……だったら?」
エンガは短く返す。
だが心の奥には、先ほどの灯華との会話がまだ尾を引いていた。
「隠してたの?」──その言葉が脳裏にこびりついて離れない。
そのわずかな迷いを、レイジは一瞬で見抜いた。
「おい……」
ズシン、と足を踏み込むと同時に拳を突き出し、地響きのような衝撃を響かせる。
「お前、今……違うことを考えてやがるな?」
「っ……!」
図星を突かれ、エンガの呼吸が乱れる。
「お前が考えなきゃいけねぇのは、目の前の俺をどう倒すかだ。違うか?」
レイジの声は荒々しいが、不思議と迷いを切り裂くような力があった。
「ふざけたこと考えてんじゃねぇ……!現実世界での事に、脳のニューロンを使うな!」
巨大な拳を掲げ、吠える。
「見せてみろよ──お前の拳をよォ!!」
その言葉に、エンガの胸の中で燻っていた迷いが、ようやく火花を散らした。
「……そうだな」
エンガは自らの頬を叩き、目の奥をギラリと光らせる。
「今の俺は……ファイターだ!!」
その叫びに、観客席が一斉に沸いた。
レイジは口角をさらに吊り上げ、低く笑う。
「そう来なくちゃなァ……!」
次の瞬間、レイジの全身が鈍色の光に包まれ、鉄へと変貌していく。
拳も腕も、まるで鋼鉄の鎧を纏ったかのように硬化し、赤い瞳がギラついた。
「見せてやるぜ……! 俺の──鉄に痛覚なしをよぉ!!」
レイジの拳がリングを叩き割り、その衝撃で氷のように床材が砕け散った。
対峙する両者──
すでに会場の熱狂は最高潮に達していた




