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第25話 「氷上の決闘」
試合当日。
フィールドに舞い降りる冷気──辺りは薄い霧に包まれ、息が白く曇るほどだった。
その中心に立つのは、銀の髪を揺らす美しき魔術師。
細身のドレスのような戦闘衣を身にまとい、冷たくも優雅な瞳でエンガを見下ろす。
「はじめましてだね、子猫ちゃん」
……ガキでもなく、少年でもなく、“子猫”。
その言葉に、エンガの目元がピクリと動いた。
「子猫ちゃん、か……なんか調子狂うな」
相手の雰囲気に呑まれまいと、拳を握り直す。だが、ジーンの目は揺れない。
──ゴングが鳴る。
「我が世の春が来た!」
彼女が優雅に手をかざすと同時に、フィールド全体が一瞬で氷に覆われた。
地面、天井、壁、あらゆるものが“極寒”の世界に変貌する。
ガキィィィン!!!
氷の刃が幾重にも走り、エンガの足場さえも滑る鏡面と化す。
「ちょっ……!」
足を取られかけるエンガ。冷気が肌を刺す。
(っくそ、ゲームでよかった……これが現実だったら、凍傷で戦うどころじゃなかった……)
それほどの“冷気の再現度”。
彼女の能力は環境を制圧するタイプの魔法。
「さぁ……凍えなさい?」
ジーンが微笑むと、氷の槍がエンガへと一斉に放たれる!
「速ぇ……っ!!」
そして、戦いは少しの劣勢から始まった。




