第12話「VFGへ──最強CPU『Ω(オメガ)』」
「……ここが、VFGか」
新道夏炉は、VR世界の一角──グラディエーターファイターズの街にそびえる
近未来的な建造物の前に立っていた。
“バーチャル・ファイターズ・ジム(VFG)”
そこは、プロゲーマーやトップランカーたちが自らを鍛えるために集う、“訓練場の頂点”。
「プレイヤーの戦闘データを学習し続ける、最強のCPUがいる」
ゼクスの言葉が脳裏をよぎる。
──「勝ちたいなら、ジムに行け」
その言葉に背中を押され、夏炉は足を踏み入れた。
VFG内部──
内部はまるで、無限に拡張されたデジタル道場だった。
空間は幾何学的に整えられ、無数のプレイヤーが仮想ボディを駆使して黙々と技を磨いている。
重厚な足音だけが、静かな空気の中で響いた。
「……さて、どこにいるんだ、“最強CPU”ってやつは」
受付端末の前に立つと、女性型の管理AIが無機質な声で応える。
「訓練モード・最高難度『Ω(オメガ)』へのアクセスですね?」
夏炉の眉がぴくりと動く。
「……やっぱ、名前が被ってるな」
思い出すのは、あのプロゲーマー・ゼクスのチーム名「オメガ」。
偶然にしては出来すぎている。
それとも、彼とこのAIには──何かしらの因縁があるのか?
「『Ω』は、VFGにおける最強のCPUです。
プレイヤーの戦闘データをリアルタイムで解析・蓄積し、最適な行動を導き出す“適応型AI”となっています。」
「……適応型、ね」
「対戦を重ねるごとに“学習”し、“進化”します。
勝てば勝つほど、“人間の限界を超えた存在”へと至ります。」
静かに、夏炉は拳を握る。
「──面白ぇ」
敵が強ければ強いほど、自分も強くなれる。
敗北を悔しんでるヒマなんて、もうない。
「やってやろうじゃねぇか。最強ってやつを──!」
──訓練エリア、転送開始
空間が揺れる。
そして目の前に現れたのは、無機質な仮面と漆黒のボディを纏った存在。
──Ω
無言。だがその姿から放たれる圧は、尋常ではない。
(これが……AI?)
鼓動が速まる。拳が疼く。
だが怯えはない。あるのはただ──挑戦者としての本能だけ。
──こうして、新道夏炉は“人智を超えたCPU”との死闘へ挑む。




