第10話「プロゲーマーの壁──完敗」
「準決勝、第2試合──“チーム・ブレイカーズ” vs “チーム・オメガ”!!」
実況が響いた瞬間、観客の熱狂が場内を震わせる。
だが、その中央に立っていたのは──たった一人の男だった。
「……あの男、1人だけ?」
夏炉が訝しげに呟くと、隣のブレイズが低く息を吐いた。
「嘘だろ……あれ、ゼクスじゃねぇか……」
観客席からどよめきが起きる。
ゼクス──このゲームで幾度も大会を制した“プロゲーマー”。最強プレイヤーの筆頭だった。
「チーム戦で1人だけとか……バカにしてんのか?」
ブレイズの戸惑いも無理はない。だがゼクスはただ静かに構えた。
「問題ない。1人で十分だからな」
──試合開始の合図が鳴り響く。
「試合開始!!」
夏炉たちは即座に陣形を組み、ミラのバインド魔法を起点に、側面からブレイズとカイが回り込む。
「一気に押し切るぞ!」
夏炉が魔力を高め、拳にブーストを纏って突撃する。
だが──ゼクスの姿が掻き消えた。
「──読めてる」
虚空を切る夏炉の拳、そして反撃。
ドガァァァン!!
「うッ……!」
夏炉の体が空中を舞い、地面に叩きつけられる。
「夏炉ッ!」
ブレイズとカイが駆け寄ろうとするが──
「遅い」
ゼクスの声と同時に、2人の攻撃が軽々とかわされ、逆に正確無比なカウンターを食らう。
「動きが単純すぎる。パターンが見えてる」
淡々とした声が戦場に響く。
「前衛が正面から牽制、サポートがバインド、アタッカーが側面を突く……典型的な中級者チームの動きだ」
その言葉に、夏炉は背筋が凍る感覚を覚えた。
(……完全に読まれてる……!?)
ゼクスはただの猛者ではない。
相手の**戦術、癖、意図、心理──すべてを分解し、見抜いたうえで叩き潰す“戦闘の解析者”**だった。
「“個”で“チーム”を叩く。それが俺のスタイルだ」
ゼクスの瞳が冷たく光る。
──その瞬間、反撃が始まった。
カイが吹き飛ばされ、ミラのバインドも読まれたようにすり抜けられ、彼女も一撃で撃破される。
「嘘……っ」
ミラが絶望の声を上げると同時に、その姿が地に沈む。
──そして残されたのは、夏炉一人。
「さあ、どうする?」
ゼクスは構えを崩さず、微動だにしない。
夏炉は拳を震わせながら立ち上がる。
(……やれるのか?)
ほんの一瞬、迷いが生まれた──その隙を、ゼクスは逃さない。
ドガァァァン!!!
鋭く、正確な拳が夏炉の腹部に突き刺さり、彼の体は再び地を這う。
視界が揺らぎ、音が遠のいていく。
──「試合終了! 勝者、ゼクス!!」
地鳴りのような歓声とともに、実況が勝利を告げる。
「たった1人で……」
「チーム戦に、勝った……」
周囲のざわめきが、ただ悔しさとして夏炉の胸に響いた。
(これが……“プロゲーマー”の壁……!)
悔しさ、無力さ、唇を噛み締める。
だがその敗北は、確かに夏炉の中に何かを残していた。
──このままでは終われない。
──俺は、もっと強くなる。
この完敗が、やがて夏炉を真の戦士へと変えていく。




