第99話:『そして――残った者』
草原は戦いの爪痕に覆われていた。
焦げた土、裂けた草、空気に漂う熱気と硝煙。
二人はついに倒れ込み、息も絶え絶え、体力は限界に達していた。
エンガの瞳はかすかに開いている。
ルミナの瞳も、同じく微かに光る。
どちらも、もう立ち上がる力は残っていない。
風が止み、草原には静寂が広がった。
時間が止まったかのように、空気は張りつめる。
誰も何も言わない――ただ、二人の存在を見守るだけだった。
「……これが、最後……か」
エンガの唇が震え、微かな声が漏れる。
ルミナもまた、息を整えようと口を開く。
「……うん……」
互いに拳を握る力も、足を踏み出す力も残っていない。
戦いの結末は、目に見えない微細な差に委ねられていた。
そして、奇跡のような瞬間が訪れる。
微かな光の中、どちらかの拳がわずかに上がった。
その拳は震え、力を振り絞るように天を突く――。
だが、光と影の中で誰もその拳の主を確定できない。
風に流され、草のざわめきに紛れ、体の影が揺れるだけだった。
「……どっちだ?」
ピノンの声が、かすかに震えた。
ルナも、口をつぐんだまま、息を呑む。
時間がほんの一瞬止まったかのように、草原には静寂が広がる。
誰もが見守り、そして誰もが答えを知らない
ただ、拳が上がったことだけを知っていた。
それは、戦いの結末を象徴する光景だった。
勝ち負け、英雄、称号――すべてが意味を持たない、
ただ、互いの意志と想いをぶつけた者だけが残る世界。
そして風が再び吹き抜ける。
光の中、拳はまだ微かに震え、草原の先で未来へと繋がる。
どちらが勝ったのか――答えは、後の世が決める。
ただ一つ確かなのは、二人の戦いは、確かにここで“終わった”のだということだった。




