第1話「格闘のフルダイブ、始めます。」
「Ver.3.9のストーリー終わった。」
薄暗い部屋の中、フルダイブを終えた新道夏炉は、メインモニターに映るログアウト画面をぼんやりと見つめた。ギャラクシールオンライン。仲間たちと冒険を重ね、最新のストーリーもクリアした。
「さてさて次のストーリーは……更新半年後か……やることなくなったなこりゃ。」
レベリング? レア装備掘り? 別にそこまでやらなくてもいいや――それが夏炉の信条だ。
「六ヶ月間何しよう……」
そんな事をいいつつ、カタログをペラペラとめくる
「マジで、最近のゲームはMMORPGばっかだなつまんねー」
フルダイブVR技術の爆発的進化により、今や市場はMMORPG一色。没入感、自由度、協力要素――それらを押し出してくる大作ばかり。
先に断っておくが別にMMOは嫌いではない、さまざまな人と出会い、面白い話も聞けるし。
だが夏炉にとって、MMOの“RPG”部分は、正直興ざめだった。
「RPGの何が面白ぇんだよ……レベル上げて殴るだけじゃん。下手でも勝てるって、俺には耐えらんねーよ。」
純粋な駆け引きとどのつまりは"プレイヤースキル”こそが、夏炉の求めるゲームだ。そんな時だった。
「そういや……“あれ”って、発売されてんのか?」
ふと思い出した。数ヶ月前、掲示板で話題になっていた一本のゲームタイトル。
『グラディエーターファイターズ』。
フルダイブVRでありながら、レベル制・スキルツリー制なし、完全実力主義の格闘特化。
パリィ、フェイント、ジャストガード、組み技、すべてがリアルタイム――。
「ルール無用の格闘か……いいじゃん。いいじゃん!」
夏炉はすぐさまネオホを開き、検索窓に「グラディエーターファイターズ」と打ち込んだ。
《セール対象!本日限定30%OFF》
「おおぉぉおおおっ!!奇跡か!?」
即決。ダウンロード購入からインストールまで、目にも留まらぬ速さだった。そして、目を閉じ、深く息を吸い――。
「さて……天下、取りに行くか。」
その瞬間、意識は現実を離れ、戦場へと没入する。――次に彼が目を開いたとき、そこは闘技場だった。
ギャラクシールオンライン
人類の新たなる新天地、宇宙で強大なモンスターと戦い、開拓していくいわゆるMMОRPGで人口は割と多い
グラディエーターファイターズ
人口は中の下の、宣伝をあんまりしてないために、そもそも発売していたのすら知らない人がいる
ネオホ
ネオスマートフォンの略