一
「ハロー、ハロー。ヘブンだよ。」
カメラを覗き込んでいつもの挨拶をする。十秒で考えた挨拶を何処の誰かも分からない相手に約五秒、投げかける。正直この瞬間は退屈でもあり、唯一空っぽになれる瞬間でもある。
私はUつべに動画を投稿する、通称ウツバーの一人、「ヘブン」という名前で活動している。高校生のときノリで始めたウツバー。一緒に始めた友達はもう、皆辞めていて、親の仕事を継いだり、様々な会社に就職したりしている。私は、大学に一応進学はしたが、なんとなく忙しくて辞めてしまった。それでもウツバーだけは続けていた。それもなんとなくだった。友達と過ごした時間のカタチをUつべに当てはめている。今は一人寂しくともなんとなく続けている。
どうせウツバーを続けるのなら収益につなげたい。親や、バイトで稼いだ小遣いでウツバーのセミナーなんかも受けてみた。特に何かが変わるわけでもなかったが、惰力で今後も続けていくだろう。
ウツバーの成功者はよく、「ウツバーの鉄則五箇条。」に従っている。私のカメラの裏の壁にも一応貼ってある。
一つ目、「コンテンツの質と多様性。」視聴者は質の高いコンテンツを求めており、同時に多様性も求めている。単調な内容ではなく、新鮮で興味深い情報やエンターテイメントを提供することが大切だそうだ。
二つ目「コミュニケーションと応答」視聴者とのコミュニケーションが大切。コメントへの返信やフィードバックへの対応が、コミュニティの形成とある種の忠誠心の向上につながるそうだ。
三つ目「法律と規制の理解」著作権、プライバシー、スポンサーシップ、その他の法的規制についての理解が必要。これにより、法的なトラブルを避け、信頼性を高めることができるそうだ。
四つ目「マーケティングとブランド戦略」自分のブランドをどのように構築し、マーケティングするかを理解することが重要。視聴者のニーズや関心を把握し、それに合わせた戦略を展開することが成功のカギとなるそうだ。
五つ目「成長と分析」 成長を促進するために、定期的にデータを分析し、視聴者の反応やトレンドを把握することが必要。この情報をもとにコンテンツや戦略を最適化する。
この五つの鉄則。言われて、「はい、そうですか」と納得はできても、実行に移せない。移しているのか分からない。それが実態である。