混乱
(あれは義手や義足のようなものじゃないだろう――)
事故現場には衝突の瞬間を見た者が数名集まっているが、大した騒ぎにはなっていない。その様子を見ながら少年は学校に向かう。
事故のショックの所為か、血を見た所為か、『金属』を再び見た所為か……、全身に広がる寒気を少年は感じていた。
*
ここは……? そうだ、昨日引っ越ししたんだ。
……引っ越しした時の事がよく思い出せない。どうやってここに来たんだ? 忘れた? 今までこんな事はなかったのに。
「どうしたの? 何かあったの?」
「……何でもない」
母さんの問いかけに適当に答える。
家の内部を見渡す。それなりの広さはあるが、おじさんの家よりせまい。おじさんの家は……確か…この家の…五倍? ……十倍? ……??
どうしたんだろう今日は。頭が重い。
母さんが何か言ってる。
「この服、悠木君のでしょ?」
「悠木……? あ、ああ間違えたみたいだね」
悠木の赤い服は僕の部屋のタンスから出された。
悠木といわれて一瞬誰か解らなかった。本当に頭がおかしい。
*
(ロボット?人間の姿をしたのは絵本の中でしか見た事はないけど。義手のように一部だけではなく、全てが……。そう、人間型のロボット)
少年はそれの存在の可能性を考えていた。短絡的かもしれないが、存在を信じさせるような事が三度もあったのは事実だ。
(ほほにつける義手のようなものは無いのだろうか¼¼?思いつかない。あのままあそこにいれば何か解ったかも。助けにいった人はあの『金属』に気づかなかったのかな?ロボットがいるのならどうして人間に似せられているのだろう?)
休み時間や給食の時間、少年は『金属』の事ばかり考えていた。