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ニンゲンとロボット  作者: 藍内
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金属質のもの

(店長からかな? でもこの前来た時本屋でこんな臭いしなかった。じゃあ、あのおじさんから? けど、作業服とか着ているわけでも無いのに)

 店長たちの周辺にはオイルの臭いがしそうなものはなく、原因は掴めなかった。

 そんな少年の疑問を知る由もなく、店長たちはまだ会話を続けている。

「まったく大変だよ。今年は六月から暑くて暑くて。寝ているだけでも汗が出てくる。おかげで皮膚炎になってしまったよ」

 そう言いながら男は袖をめくり、二の腕を店長に見せた。

「こりゃひどい」

「だろ?かいちゃいけないって分かってるけど気ぃ抜くとすぐかいてしまう。薬塗ってるのにかいてるせいで全然治らないんでホントに困るんだ」

 男は患部を見せた後、また話題を元に戻した。その際男は袖を戻さぬまま腕を体の横にぶら下げたため、少年のいる所から患部がよく見えるようになった。

 患部は男の話した通り、かきむしられて赤くなっている。気味が悪く、少年は目をそらそうとした。だが、あるおかしな物を見つけたため、改めて患部を観察した。そのおかしな物は男の二の腕の赤くなった場所、その中心にあった。赤くなり皮膚が剥けている所に三つ程、鈍い銀色をしたそれは、鉛のような、鉄のような、金属に近い光沢と硬質さを持っていた。

(あれは何?)

 少年が金属質の物に興味をひかれていると、やっと店長が少年の存在に気がついた。

 男は申し訳なさそうな顔をすると、本の代金を支払い書店からさっさと出ていった。

 少年は男が出て行った方向に顔を向けながら、店長に本の代金を渡した。

「おや、ちょっと足らないね」

 少年はちょうど雑誌の金額を持ってきていた。どこかに落としたのだろう、と足下を見るとレジから五十センチ離れた、少年が先程まで並んでいた所に不足分の硬貨が落ちていた。

 硬貨を拾い、本を買って外に出る。暑い外気が全身を包む。

 周囲を見渡すがあの男の姿はもう無い。支払いに手間取った間に隣の文房具屋の角を曲がるか、地下鉄に乗るかしたのだろう。

 男の腕にあった物に少年は既視感を抱いた。

(どこかで見たような……どこだったかな?)

 しばらく考えていたが、結局どこで見たのか、それとも見た事はなかったのかどうか解らなかった。

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