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何も知らない
16歳の時に書きました。
(加筆・修正は行っています)
あなたは今生まれた
周りは全て見たことのないもの
あなたは何も知らない
歳月が過ぎた
あなたは知能が発達したと思うようになってきた
世界がどういう物か分かった気になっている
まやかしの知識を手に入れたから
近しい者に嘘を教えられたから
あなたは何も知らない
* * *
雪が、家の屋根に少しだけつもっていた。雪は車に乗り込んだ時より強く降っている。
「どれくらいつもるかな?」
隣に座っている悠木はさっきから、白っぽくなった町の風景を見てはしゃいでいる。
?
急に車がゆれた。
「……危なかった。路面が凍っているから気をつけないと」
父さんの声は少し震えていた。
車はすぐに安定した走りに戻った。僕も悠木も胸をなで下ろす。
前の座席にいるお母さんがこっちを向いた。ほほえみながら何か話そうと――。