46. 新鮮な反応
草を分けて進むと、目の前に草原が広がった。空は青く、遠くに山が見えた。神楽さんが遅れてやってきて、息をのむ。
「ここが、ダンジョンですか?」
「そうです。草原タイプのダンジョンです。このタイプのダンジョンは初めてですか?」
「はい。実習では洞窟タイプのダンジョンでした」
「なるほど。まぁ、洞窟型は多いですからね」
俺は『竜神の杖』と『跳竜の靴』を願う。すると、ドラゴンの手を模した硬質な黒い杖が現れ、安いスニーカーが金色のバスケシューズに変わった。
「もしかして、それって、『アイテムカード』ってやつですか?」
「はい」
「すごい! 本当にあるんですね!」
「ええ、まぁ」
「スキルカードとかもお持ちなんですか?」
「ありますよ」
5枚のカードを提示する。ダンジョンが増加してから4つのダンジョンを攻略した。内訳は、次のようになっている。
====================
・腕力プラス
・索敵プラス×2
・隠密プラス
・魔力プラス
====================
神楽さんは、ショーケースに展示された宝石でも見るかのように、俺のスキルカードを眺めた。その反応が新鮮で、ちょっぴり誇らしく思う。
「そういえば、これをギルドの人に見せなくていいんですか? 報酬が高くなるって聞いたんですけど」
「そうですね。ただ、俺クラスになると、見せようが見せまいがあんまり報酬が変わんないし、わざわざこんな場所に来てもらうのも忍びないので、見せなくなりました」
今は、スキルカードを見せずとも、トップランカーというだけで、生活できるくらいの報酬が貰えている。
「へぇ。もしも冒険者になったら、宿須さんみたいなこと言ってみたいです!」
「頑張ってください」
ただ、神楽さんを見ていて思う。もしも彼らが、神楽さんと同じくらいの反応を示してくれたなら、毎回見せているかもしれない。
「スキルカードを手に入れると、やっぱり、何か変わったりするんですか?」
「正直、あんまり実感はないのですが、重いものが持てるようになったと思います。それに、モンスターの気配を探すのもうまくなった気がします」
そのとき、モンスターの気配を感じた。早速、見せ場が来たみたいだ。見上げると、2つの影が迫ってくる。ヒトクイオオワシだ。強靭な嘴と爪で襲い掛かってくる鳥型のモンスターだ。
「来ますよ! 準備してください!」
「え、あ、はい!」
神楽さんが剣を抜いて構える。彼女の実力を見たいので、ヒトクイオオワシと戦ってほしいところではあるが、いきなり2体は厳しいと思うので、1体は俺が始末することにした。
杖先をヒトクイオオワシに向け、魔力を込める。杖先で炎が渦巻き、球形に炎を集める。ヒトクイオオワシに狙いを定め、火球を放った。しかし、ヒトクイオオワシは俺の火球をかわした。
「やるじゃん」
ヒトクイオオワシは爪を向け、襲い掛かってきた。俺は杖を振って炎の壁を作る。壁の隙間から、ヒトクイオオワシが宙でバタつくのが見えた。だから、『跳躍の魔法』を発動し、大地を強く蹴る。一瞬でヒトクイオオワシとの距離を詰め、その頭部に杖を叩きつける。当たる寸前に、『炎魔法』を発動。打撃+爆発の勢いでヒトクイオオワシを勢いよく叩き落とした。
頭から地面に突き刺さるヒトクイオオワシ。その時点で虫の息に思えたが、着地の勢いも利用し、もう一度打撃+爆発のダメージを与える。ヒトクイオオワシの胴体が大きく跳ね、黒い霧となって消えた。
(まずは一体)
もう一体は、神楽さんに任せようとしたが、もう一体のヒトクイオオワシは旋回して逃げようとしていた。
(逃げんなよ)
だから火球を放ったら、火球が直撃し、ヒトクイオオワシは炎に包まれ、黒い霧となって消えた。ポーションと思しき小瓶が落ちてくる。
「あ、やべ」
ついつい本気を出してしまった。
神楽さんを見ると、唖然としていた。
やりすぎて引かれたかもしれない。何かフォローしないと。
「まぁ、モンスターはこんな感じで倒してもらえればいいと思います」
「いや、無理ですよ」と神楽さんは即答する。
そりゃあそうだよな。
「でも――」と彼女の目が輝いた。「すごい格好良かったです!」