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腐ったミカンの下剋上  作者: 三口 三大
第3話 可愛い女の子とダンジョン攻略というファンタジー
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44. わかったこと

「宿須さんから連絡してくるなんて珍しいですね」


「ええ、まぁ」と俺は答える。「ちょっとお聞きしたいことがありまして」


 ギルドのエントランス。俺の前には、美津目さんが座っていた。


「聞きたいこと? 何ですか?」


「神楽さんのことです。一緒にダンジョンへ行く約束はしましたが、彼女の人となりはちゃんと知っておきたいと思いまして。美津目さんから見た彼女ってどんな人ですか?」


「神楽と直接話せばいいんじゃないですか」


「周りからどういう評価を受けているのかも知りたいので」


「なるほど」と言って、美津目さんは思案顔になる。「そうですねぇ。一言で言うなら、神楽は、『神に愛されている子』だと思います。あの子って、姉の私が言うのもあれですけど、めちゃくちゃ可愛いじゃないですか。それでいて、勉強も運動もできるので、神様に愛されているとしか思えない。正直、姉の私も嫉妬するレベルですよ。でも、気の利く良い子だから、憎めない」


「へぇ。あれだけ可愛いのに、運動と勉強もできるのはズルいですね」


「本当よね」と言って、美津目さんはさらに詳しく話してくれた。


 美津目さんによると、神楽さんは、高校時代にバスケで全国大会に出場した経験があり、難関私立と呼ばれる大学を一般入試で合格したらしい。話を聞いているだけで、彼女の超人っぷりがわかる。


(たまにいるんだよな、そういう人)


 そして、そういう人に限って、心に余裕があったりするから、良い人だったりする。実際、彼女と話していて、嫌な感じはしなかった。


 しかし、話を聞けば聞くほど、疑問は大きくなる。充実した人生を送っていそうなのに、彼女は何を願うのだろう。わざわざ危険を冒さずとも、たいていの願いは叶ってしまいそうだが……。


「美津目さんは、神楽さんがどうして冒険者を志しているのか、ご存じなんですか?」


「それが、実はちゃんとわかっていません」


「え、そうなんですか?」


「はい。神楽は、『ダンジョンに興味がある』としか言わないので」


「なるほど」


「でも、冒険者になりたい理由は他にあると思うんですよね」


「例えば?」


「……願い事を叶えたい、とかですかね」


 これが女の勘ってやつか。俺は驚きのあまり、声を上げそうになった。しかし平静を装って、美津目さんとの会話を続ける。


「願い事? 神楽さんには、叶えたい願い事があるんですか?」


「心当たりはあります。が、それについては、ちょっと私の口からは言えません」


「……わかりました。ちなみになんですけど、神楽さんが、願い事を叶えたいことを理由に、冒険者を志しているのではないかと思う根拠ってあるんですか?」


「冒険者養成学校へ行く前に、よく聞かれたからですかね」


「へぇ。ダンジョンに行ったら、願い事が叶うんですか?」


「ただの都市伝説ですよ。ネットに転がっていそうな。少なくとも、現場からそういった類の話を聞いたことはありません」


「なるほど。でも、神楽さんはその都市伝説を信じているってわけですね」


「多分」


「そんな都市伝説を信じたい状況だったんですかね」


 美津目さんは、イエスともノーとも答えず、口を閉ざした。


 神楽さんに何かがあったみたいだが、この調子だと、神楽さんに直接聞く以外に彼女の願いを知る方法は無さそうだ。


(まぁ、神楽さんのことが少しわかったから、それで良しとするか)


 話を聞く限り、俺の敵になることは無さそうなので、一日くらいなら一緒に行動できそうだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >彼女の人となりはちゃんと知って”おきまして”。 「おき」と「まして」の間に「たいと思い」を入れてみてもいいのではないかな~?と思いまして。
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