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腐ったミカンの下剋上  作者: 三口 三大
第2話 腐ったミカン
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31. 幸運の跳竜

 俺は嫌な予感がして、初瀬さんに目配せする。初瀬さんもいろいろと察し、その場から離れようとした。が、昨日情報交換を行った冒険者に気づかれ、「おーい、君たち!」と声を掛けられてしまう。ここで無視したら、心証が悪くなるだろうから、俺たちは渋々、杭打たちに合流する。


「杭打さんたちも『幸運の跳竜』を探しているらしいんだ」


 と男はニコニコ語る。この男は、杭打の煩わしさを知らないらしい。


「ふむ」と地図を見ていた杭打が顔を上げる。「ここにいる者たちは、全員、『幸運の跳竜』を探しているってことでいいんだな?」


「はい」と男が答える。


 その場には、杭打の仲間も含め、15人くらいの冒険者がいた。


「パーティーの数は5つか。俺たちのパーティーは4人いるから、2人に分ければ、6つのパーティーができるな。なら、幸運の跳竜を1か所に追い込むような形で6つのルートを設定し、それぞれのパーティーにルートを振り分けようか」


「なるほど」


「少し考えれば、思いつきそうなアイデアだが、誰も試していないのか?」


「いや、それなら試しましたよ」と男は地図を取り出す。そこには色ペンでいくつかのルートが記されていた。「ただ、やつの動きが僕たちの想像以上だったので、うまく追い込めませんでした」


「ふむ」


 杭打は渡された地図を眺める。先ほどの嫌味に対する謝罪がない。男を見ると、とくに気にしている様子はなかった。初瀬さんは嫌な顔をしていた。


「よし、なら、君たちはこのルートを、君たちは――」


 杭打から指示を受けた後、俺と初瀬さんは指定されたルートを歩く。


「まぁ、悪い話じゃない」と初瀬さんは言う。「これで俺たちもやつを倒しやすくなったからな」


「ですね」


 モンスターを倒しながら、進んでいると、不意に声が聞こえた。


 うまく聞き取れなかったが、幸運の跳竜がやってきたことを察し、杖を構える。


 闇の中から、幸運の跳竜がぬっと現れ、俺たちに突っ込んできた。その瞬間、俺は魔法を発動し、大量の氷の粒を幸運の跳竜にぶつけた。


「ギャッ」


 予想外の範囲攻撃だったためか、幸運の跳竜は目をつむって足踏みをした。その隙を逃さず、俺は間合いを詰めて、杖を振り下ろす。跳竜は最小の動きで俺の攻撃を避ける。が、それは俺の想定通りだった。杖が幸運の跳竜の脚をかすめたところで、魔法を発動。杖で地面をたたいた時、一面が凍って、跳竜の右脚も氷漬けになった。


「ギャギャッ」


 大事な脚が地面に張り付いて、幸運の跳竜は慌てる。無理に動かせば、脚を失うことになる。そんな幸運の跳竜の顔面を俺は杖でぶん殴った。1発、2発、3発! 氷魔法を付与した攻撃で、幸運の跳竜の体力を確実に削る。


「初瀬さん!」


「おぅ!」


 俺が後方に跳ぶと、入れ替わるように初瀬さんが跳びかかり、炎をまとった剣で、幸運の跳竜の首を切り落とした。


 呆気ない最期。


 黒い霧となって、消える幸運の跳竜。


 俺たちはハイタッチで勝利を祝った。


 そして、跳竜がいた場所にあったアイテムに気づく。


「宿須君、これは……」


「何ですかね?」


 初瀬さんに促されたので、俺がそのアイテムを拾う。金色のバスケットシューズみたいなアイテムだった。かかとのところに、『跳竜の靴』と書いてある。


「履いてみるといいよ」


「いいんですか?」


「もちろんだ。君がいなかったら、倒せなかったからね」


「ありがとうございます」


 俺は早速、右足で靴を履いた。中はふかふかしていて、履きやすい靴という印象だった。


「どうだ?」


「履きやすいですね」


 しかし、履きやすい以外の特徴が何かあるはず。その特徴について探ろうとしたとき、闇の中から杭打とその仲間が現れた。杭打は『跳竜の靴』を見て、興味を示す。


「それは?」


「幸運の跳竜を倒したら、手に入ったアイテムです」


「なるほど。何で、勝手に履いているんだ?」


「え?」


「まずは私に報告して、その靴を渡すべきだろ」

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