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腐ったミカンの下剋上  作者: 三口 三大
第2話 腐ったミカン
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24. 再会

 軽井沢ダンジョンは、今まで参加したどのダンジョンよりも人の数が多く、物々しい雰囲気に包まれていた。戦車などもあって、臨戦態勢だ。それほど、このダンジョンが警戒されているのだろう。


 受付しようとしたところ、「まだ、あまり経験がないのですね」とギルドの職員から嫌な顔をされた。


「はい。あ、でも、ヌシは倒しましたよ」


「キングゴブリンですか?」


「はい。そうです」


「なるほど」


 俺からしたら強敵だったが、彼らからするとモブに過ぎないようだ。


(なら、あんたは倒せるのかよ)


 と思ったが、もちろん口にはしない。


 タブレットに映っているだろう俺の情報とにらめっこしていた職員は、最終的に「わかりました」と言って、俺の書類を受け取った。


「あなたの参加を認めます。が、絶対に他の人とパーティーを組んでくださいね」


「わかりました」


 ダンジョンへ向かう途中に、アイテムを保管しているトラック型のアイテム車両がずらりと並んでいた。今までのどのダンジョンよりも多くのアイテムを選択することができ、中にはレアリティの高そうなアイテムもあった。


 しかし、経験の浅い俺がレアなアイテムを使用することに、職員が難色を示したので、空気を読み、『氷の杖』、『楔帷子』、『黒魔導士の帽子』、『黒魔導士の黒衣』、『黒魔導士のブーツ』、『丈夫な布袋』で攻略に挑むことにした。氷の杖を選んだ理由は、このダンジョンに出現するモンスターには、氷が効くとの前情報があったからだ。


 また、このダンジョンでは、ポーションや魔力ポーションなどの回復系アイテムの支給量が多かった。後で知った話だが、たくさんのモンスターを倒しているため、この手のアイテムが多くなっているらしい。


 改めてダンジョンの入口へ向かう。このダンジョンに関しては、出陣式というものはなく、自由に冒険者の出入りがあった。ダンジョンから出てきて、そのまま救護室へ運ばれていく冒険者の姿もあった。現場はピリピリして、昔の職場を思い出し、軽いめまいを覚える。


(さて、どうしたものかな)


 ギルドの職員には、誰かとパーティーを組めと言われたが、周りは知らない人だらけだし、自分の歴を考えると、組んでもらえるかわからない。


 しれっと一人で入ることも考えた。というか、それが良い気がしてきた。そもそも俺は、死ぬつもりでダンジョン攻略に参加した口だから、死ぬのは怖くない。


(まぁ、死ぬ気はないけど)


 覚悟を決め、一人で繰り出そうとしたとき、「あれ? この前の人じゃん」と声を掛けられる。見ると、茶髪のセンター分けで、顎髭を生やした少しチャラい男が立っていた。その顔に見覚えがある。『霞ヶ浦ダンジョン』で出会った、嫌いな人とは仕事をしないことがモットーの男だ。


「あ、どうも」


「おぅ、久しぶり。元気してた?」


「はい」


「もしかして、これから参加する感じ?」


「はい」


「ふぅん。そっか」


 と言って、男はじっと俺を観察する。


「魔法は使い慣れているの?」


「慣れているかはわかりませんが、ちゃんと使えます」


「なら、俺と一緒にパーティーを組まない?」


 陽の感じがする彼とは、性格の相性が良くないかもしれない。それでも、今回も出会えたことは何かの縁だと思い、俺は頷く。


「はい。よろしくお願いします」

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