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腐ったミカンの下剋上  作者: 三口 三大
第2話 腐ったミカン
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14. 日常

 目覚めると見知った天井があった。


「……また、朝が来たのか」


 いつもなら、起きてしまったことを後悔する。しかし今日は、生きていることに絶望することはなかった。


 理由を考えてみる。


 昨日のダンジョンのことを思い出し、納得する。


 俺の死に場所は布団の上ではない。


 寝返りを打とうとして、痛みが走る。筋肉痛だ。全身に針でも刺されているんじゃないかと思うほど、痛い。


(ポーションを飲んでも、筋肉痛はでちゃうのね)


 俺は寝返りを諦め、天井を眺めた。


 天井の木目を眺めていると、昨日の冒険を思い出す。目を閉じれば、上司を殴った爽快感が蘇った。


そして、いつの間にか眠っていたらしく、次に目覚めたときは昼になっていた。


 痛みで悲鳴を上げる体を無理やり動かして、立ち上がった。カーテンを開けると、光が差し込む。今日は快晴だった。


(……出かけますか)


 外に出て、空が青いと思ったのは久しぶりのことだった。まだ12月だから、寒いものの、歩きたいと思えるほどには活力が湧いてくる。


 駅まで歩いていると、意外と若い人の姿があることに気づく。平日の昼間だったから、老人ばかりかと思ったが、そうではないらしい。また、行列ができているラーメン屋があって、家の近くに人気店があることを知った。いつもの道であるはずなのに、今日は新たな発見が多い。俺が知るべきはダンジョンだけはないようだ。


(今度、あのラーメン屋によってみるか)


 電車に乗って、ギルド指定の病院に向かう。ダンジョン攻略後に健診を受けないと、次のダンジョンには挑戦できないらしい。正直、病院は好きではないが、次のダンジョンにも挑戦したいので受けることにした。


 健診は1時間くらいで終わった。とくに異常はなかったが、結果が確定するまではダンジョン攻略に参加しないよう命じられる。結果が出るまで、だいたい2週間は掛かるらしい。


 病院の近くにあるカフェで軽いランチを食べながら、今後について考える。


(2週間もダンジョンに行けないのは、ヤバいな)


 このままでは貯金が尽きる。


(どうしよう)


 窓の外に目を向けると、バイトの配達員の姿があった。


(俺もあれをやろうかな)


 あのバイトも、数を稼げば、それなりの額になるらしい。また、体を動かすので、体力強化にも良さそうだ。あと、時間の調整もできるから、空いている時間にダンジョン攻略に向けた勉強もできる。


(勉強と言えば、この近くにギルドがあるんだよな。そこに冒険者向けの資料室とかがあるみたいだし、行ってみるか)


 善は急げではないが、やる気があるうちに行動したい。俺は残っていたコーヒーを流し込んで、カフェを後にした。


 ギルドに向かうため、先ほどの病院の前を過ぎようとして、あることに気づく。


 穏やかな気持ちで病院を去ったのは、今日が初めてかもしれない。

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