追放された最強魔術師はトラウマなセカンドライフに涙する。 ~俺は…、拷問器具だけじゃなく、あらゆるものに恐怖を感じるから、お願いだから一人にして欲しい〜
例えば隣にいる奴が古代兵器のスイッチを持っていて、そのスイッチを押せば自分の家族も友人も守るべき国民も自分自身も一瞬で消し飛ぶと知っていたら?
少なくともソイツから目が離せないだろ?危害は加えないにしても、できればそのスイッチと隔離したいよな?
例えソイツを昔から知ってても、スイッチ
を押さない確証はないもんなぁ? 側に居たって全て知れるわけじゃ無いもんなぁ。
『この度は残念でした』
『××××様が死んでしまって、貴方がなにを考えているのか誰も分からなくなった。貴方のその強大な力がこちらに向く前に貴方を殺すことができなくなったんです』
帝国魔術師団、総帥。
最底辺のスラム街からのし上がった俺は、確かに煙たがられていた。帝国軍の上層部の中でも俺と対立する奴は決して少なく無かったし、皇族の中にも俺の命を狙う奴がいた。
『××××様はご存知の通り相手の思考を読むことができます。××××様はその能力を買われ、皇帝陛下から貴方の監視役として貴方の右腕となりました』
くだらない任務だった。皇位継承権を賭け、第二皇子がドラゴンの血を皇帝陛下に献上する為に魔術師団を使いたいということだった。
××××は俺を庇って死んだ。俺は辛うじてドラゴンを倒し、国に戻って××××の死体を埋葬しようとした。
××××の死体を抱えたまま国へ戻ると、俺は皇帝に刃向かったことになっていた。何故か国家反逆罪の罪を着せられ、牢に入れられた。
『誤解を解こうと、自ら枷を嵌め、檻に入って頂き助かりました』
待ち構えていたのは親友だった。何故か俺に対して他人行儀で、これから屠殺して食す豚を見るような目をしていた。
『残念、貴方もう終わりですよ』
『ねぇ、どんな気分ですか? 愛した女は皇帝の息のかかったスパイで、貴方にかけた愛の言葉は全て嘘だった気分は。貴方が今まで証明してきた国への忠誠心が全く信用されていない気分は? 親友だったはずの僕が、貴方を裏切った事実についてご感想は?』
『ねぇ? 時間かけたんですよ。 これでも一生けんめいがんばったのに。 ゆうしゅうであるべききぞくのぼくが、げれつなすらむのげみんにまけたときから、どうしたらこのきもちがわかってもらえるんだろうって。どうしたらぜつぼうしてくれるのかな、きみのあかるいえがおがぐっちゃぐちゃになるのかなって。ずっとずっとずっときみのことばかりかんがえてたのに』
時間経過は分からない。俺はただただ拷問を受け続けた。親友だった×××は、俺の全てが憎いようだった。
第二皇子が皇帝に即位し、恩赦によって俺は追放された。顔に焼き印を押したのは×××、もう二度と帝国への入国は許されない。
拷問の結果、俺の髪は絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたような汚い灰色になった。左足は使い物にならなくなり、生きているのが不思議だった。
×××は魔術師団総帥の座に就任したと聞いた。
追放罪用の罪人門から国を出た俺を呼び止めたのは×××だった。
「皇帝殺したの、お前だろ」
「凄いですね。どうして分かったんですか」
俺は左足を引きずりながら歩いた。正直、確証なんか無かった。
「××××を殺したのもお前だろ」
「ええ。仰る通りです」
「お前、何がしたかったんだ。俺を憎んで拷問したかっただけなら、恩赦にする必要ないだろ」
「貴方が生きてない世界で生きる意味はないんです。貴方がいない国にも用はない」
「私、貴方のことが好きみたいです」
俺のセカンドライフは、なんだか悲惨なものになりそうです。