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第94話 成都作戦終了


 メッシーナとバイザーが時代劇の殺陣たてのように悪魔崇拝者たち(あくにんども)をバッタバッタと斃していく。


 階段を下りてくる悪人連中の顔をよく見ると、目が逝っている。悪魔崇拝者ならではの目なのだろう。不思議なことに悪人どもは飛び道具は持っていないようで、手にしているのはモップなどの掃除道具がほとんどだった。中には、排水管の詰まりを直す先にゴムの付いたスッポンを持っているやつまでいる。


 こいつらなめとんのか!


 雑魚は雑魚だが、こいつらいったい何人いるんだ? 数を数えときゃよかった。メッシーナのいい訓練になるからいくらいてもいいけどな。



 もちろん目分量だが、メッシーナとバイザーで300人ほど悪魔崇拝者たちを処分したところで、打ち止めになった。間を空けずコロがきれいさっぱり処分している。


「メッシーナ、相変わらず良く分からん動きだが、ほぼ一撃で敵に致命傷を与えたのは良かったぞ。

 バイザーは、もう少し脇を閉めて小さくてもいいから素早くミートしろよ」


 メッシーナは褒めて伸ばす教育方針なので、適当に褒めてやったが、バイザーは、伸びしろがないのでコーチングは無意味だ。ということで俺自身のコーチング能力を伸ばすため、野球のコーチに成ったつもりであえて辛口の指導をしてやった。


「うん」「心します!」


「もう打ち止めのようだから、地下3階に下りて、ちゃんと確認してみよう」


 再度地下3階まで下りていき、これまで通り俺が先頭に立って扉を開けると、先ほど孔からのぞいた時と変わらず、車が一台もいない駐車場だった。


「あの火山地獄がどうなったか気にはなるが、いちおう敵の大元はトルシェの大魔法『物質変換ウラン235』で片付けてしまったことにしよう。もし、敵の大元がまだ健在でまたやって来ても簡単に返り討ちにできそうだものな」


 そう勝利宣言して扉を閉めようとしたところで、アズランが駐車場の中で何か見つけたようだ。


「駐車場の真ん中に、何か光る物が」


「何だろうな?」


 俺がそういったとたんに、アズランが俺の脇をすり抜け、その光る物を拾って、俺の元に持って来てくれた。


 手渡されたのは直径5センチほどの見た目ガラス玉。そのガラス玉の3分の1ほどが欠けていた。


「なんだろうな?

 トルシェ分るか?」


「ただの想像だけど、これって、さっきわたしが吹き飛ばしちゃった火山のあった星かも?」


「星?」


 壊れたガラス玉を覗くと、ガラス玉の中で何かがうごめいている。


「この中に何かいるぞ」


 なんだかわからないが赤黒いものがうごめいているのだが、そいつはだんだん小さくなってきている。


「中にいるのがだんだん小さくなってきた。……。あっ! 消えた」


 その赤黒いものが消えたとたん、ビビビッという感電にも似た感覚と共に俺の中に何かが入ってきた。それと同時に、手に持ったガラス玉が砂のように崩れていき、なくなってしまった。


「なんだこの感覚? うん? この感覚は覚えがあるぞ。

 あっ! 思い出した。魔神『黄昏のアラファト・ネファル』を斃した時と同じ感覚だ!」


「ダークンさん。ということは。ダークンさんの言っていた赤黒いものが実は魔神に匹敵する悪魔王で、そいつがさっき消滅したから、そいつの魂がダークンさんに吸収されたんじゃ」


「俺って前回みたく進化するの?

 というか、魂を吸収して進化するって、俺って女神さまと思ってたけど、実は女悪魔さまだったの?」


 進化はありがたいが、女悪魔さまは困る。非常に困る。しかし、よーく考えたらゾンビ転生して以来、ずーとなにがしかの敵を斃して進化してきたのは事実。開き直ってしまっても、俺が俺であることには変わりない。まっ、今さらどうしようもないし、どうでもいいか。


 しばらく様子を見たが俺にこれといった変化はなかった。女神さまの進化先があるとして一体何なのか興味はある。


「今さらだが、バイザーの連れてきた2人と運転手はどうなったんだろうな?」


「車が見つかったとき運転手はいませんでしたから、運転手はすでに。IEAのエージェントの二人についてはまだ希望はあるかと」


「一人、二人、どうってことないが、一応トップとすれば格好だけでも救援しないわけにはいかんからな。

 アズラン、IEAから来たエージェントが2人行方不明になってるんだ。この地下3階辺りでいなくなったのは確かなんだがな。悪いが、このビルの中を探してきてくれないか?」


「はい。どんな顔形だったんですか?」


「このビルの中で生きている2人組ならきっとその二人だ」


「なるほど、それじゃあ、いってきます」


 俺の非常にアバウトな指示でもアズランは理解できたようで、ぴゅーといった具合でいってしまった。


「アズランが帰ってくるまで、しばらくここで待っていよう。

 このビルの中に誰もいないと分かったら、どこかにいるかも知れない悪魔崇拝者たちにここを再利用されないよう壊してやろう。

 バイザー、それでいいよな?」


「はい。お願いします」


 10分ほどしたところで、アズランが戻ってきた。さすがアズラン。


「地下2階から一番上の30階まで一応見てきましたが、生きてる人間は一人もいませんでした」


「アズラン、ご苦労。

 バイザー、そういうことだ。諦めてくれ」


「残念ですが諦めます」


「それじゃあ、撤収!」


 俺たちは階段を上って1階まで上がり、そこからビルの外にでた。やはりどこにも俺たちの乗ってきた車はなかった。運転手も見当たらなかった。仕方ない。


「これくらい敷地が広くて周囲のビルとの距離があれば『神の鉄槌』で一撃でぶっ壊せると思うが、大事を取るか。


 ちょっと前に池袋かどこかでビルをぶっ壊したが今回もあの方式でいこう。


 ということだから、コロ、目の前の建物の中の金物を全部食べてくれ」


 すぐにコロから触手がビルにとりついた。1分ほどで触手が戻ってきた。


「3人は残念だったが、今回の作戦終了だ。宴会場に急ごうか」



 俺たちはアズランの案内で、宴会場と定めたホテルに移動した。このホテルは白鳥麗子がネットで探したお勧めのホテルらしい。


 歩き出して5分ほど、足元から振動が伝わってきた。振り返ると例のビルが下の方から潰れていき、最後には粉々になってしまった。ホコリが周囲にエライ勢いで舞い上がったが俺たちまでは届かなかった。


 トルシェの物質変換の威力は実感できなかったバイザーもこれにはたまげたようだ。


「これが女神さまの力。

 アーメン」


 アーメンする暇あれば二礼二拍手一礼しろよ。そういえば、こっちじゃ布教してなかったから誰もやり方を知らなかったな。最近フォーを感じてないし布教もおいおい始めるか。


 目当てのホテルについた俺たちは、涼音と白鳥麗子も呼んで宴会を開いたのは言うまでもない。もちろん、費用はバイザー持ちだ。残念ながら満漢全席はメニューになかった。




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