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第91話 神の八つ裂きスフィア


 俺たちを囲む無数の異形の怪物たちに向かって、コロからこちらも無数の触手が伸ばされた。


 コロの触手によって怪物たちは近づいてくる端から触手に吸収されていく。


「コロ殿の攻撃は爽快ですなー」と、バイザー。


 バイザーの言う通り、コロの触手攻撃は見てて爽快だ。


 コロばかりここでいい格好をさせておくと、俺のレゾンデートル、存在意義が薄まってしまう。そうなるとおれの存在に対する挑戦となってしまうので、何かカッコいい技をバイザーたちに見せてやろうと思い立った。


 リンガレングの全体攻撃技はある一点を中心にしてそこから周囲に広がっていく技しかない。今回のように俺たちが360度敵に囲まれている状況は想定されていないということだ。


 俺を中心にして輪っかを作り、その輪っかが周囲に広がっていけばいいだけなのだが、魔法の天才トルシェならいざ知らず、俺だとちょっとだけ時間がかかる。


 今のところ異形の怪物たちが押し寄せる速さと、コロが吸収する速さは拮抗しているようなので、少し考える時間もある。


 うーん、輪っかが広がりその輪っかに触れたものが切り刻まれる。そういえば、ウル〇ラマンに八つ裂き光輪ってのがあった。あれは飛んで行ったが、あれが広がっていくイメージだ。ちょっと違う?


 俺は神さまなので、難しい理屈などは超越している。従ってイメージさえでき上ればどういった魔法だろうと技だろうと発動できる。ハズ。たしかにこれまでもリンガレングの技を何も考えずに発動できた実績がある。実績は理論にスグル!


 さっきは輪っかと考えたが、これを2次元から3次元に拡張した球面の方が汎用性がある。全方向どこにいる敵も八つ裂きだ! よーし、俺のイメージは固まった。


 いくぞ、神の八つ裂きスフィア!


「コロ、俺がこれから大技を見せるから、触手を引っ込めろ!」


 すぐにコロの触手がコロの体の中に戻っていく。それと同時にこれまでコロに吸収されて足止めされていた異形の怪物たちが俺たちに向かって殺到し始めた。


「女神さま!」バイザーが声を上げる。メッシーナは近づく異形の怪物たちに対しても無表情を貫いている。そういうところは元ナンバーワンだ。もちろんフラックスも無表情だ。フラックスはそもそも異形の怪物を脅威と思っていない可能性もある。


「神の八つ裂きスフィア、発動!」


 何かカッコいいポーズを付けたかったが、いいポーズを思いつかなかったので景気づけの声だけだ。


 俺を中心にして半径5メートルほどの半球状で半透明の白い膜が最初にでき上り、その膜が外側に向かって広がっていった。


 異形の怪物たちは、もうそこまで迫っていたが、俺の八つ裂きスフィアに触れたとたん、バラバラに砕けていき赤黒いミンチと黒い粘液になっていった。


「コロ、後始末を頼む」


 コロから触手が伸びて、ミンチと粘液を吸収していった。その間も八つ裂きスフィアは広がり続けて怪物たちを砕いてミンチと粘液に変えていっている。


 キリがないかと思われた異形の怪物たちだが、八つ裂きスフィアが1キロほど先までひろがったところで消えた時には動いている物はいなくなった。


 コロの清掃もそのうち追いついて、ゴミはすっかり片付いている。


「まさに神の奇跡!」と、感動の表情をしてバイザーがつぶやいた。


 バイザーは一神教の神父さまだったはずだが、そんなこと言っていいのか? 誰かにチクられても知らんぞ。


 メッシーナとフラックスは相変わらず無表情だ。


「いちおう、今回は敵の攻撃を退けたが、何も進展はなかったな。

 そろそろこの空間から出たいんだが、まだ敵の接待は続くのかな? 逆に言えば、接待がこれだけで打ち止めになって、このまま放置プレイされてしまうとマズい。俺やフラックスはともかくメッシーナとバイザーは生身の人間だものな」


「このままここに閉じ込められてしまうことがあるんでしょうか?」今度は不安になったのか、バイザーが俺に聞いてきた。


「その可能性は否定できないが、少なくとも俺はどうってことはない。ワハハハ」


「……」バイザーが黙り込んでしまった。ちょっと言い過ぎたか。


「今のは冗談だ。俺が身内を見捨てることはこの身が滅びようとも決してないからそこは安心しろ」


「わたしも身内に入っているのですか?」と、バイザー。


「当たり前だ。お前も、メッシーナも、フラックスも俺の身内だ」


「ありがとうございます」


「とはいえ、そろそろここから出たいよな。

 こういった時はな、国際〇助隊に救援を要請するのだ。

 国際救〇隊応答せよ、国〇救助隊応答せよ!」


 俺はトルシェに作ってもらったトランシーバーをキューブから取り出し、ノリでトルシェを呼び出した。


『はい、こちら国際〇助隊! どうしました?』


 トルシェの声がトランシーバーから聞こえてきた。さすがはトルシェの作ったトランシーバーだ。みょうちきりんな空間からでもちゃんと拠点にいるトルシェにつながった。しかし、トルシェがこのネタも知っていたとは。恐るべし!


「トルシェ、すまんが俺たち妙な空間に閉じ込められた。どうにかしてここから出たいんだが何とかなりそうか?」


『いま、会話できてますから、こことダークンさんのいるところと繋げてしまうだけで戻ってこられますよ』


「おう、さすがはトルシェ。

 それじゃあ、いったんそっちに戻ってまた成都にいってみるから空間を繋げてくれ」


『はい、はーい。……。繋げました』


 俺の目の前にこの前拠点から成都にいったときと同じ扉が現れた。扉の先は拠点だろう。


「みんな、いったん恵比寿の拠点に戻って出直しだ」


「はい」「うん」




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