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第88話 攻撃隊何処へ行く?


 バイザーが連れてきたIEAの下っ端エージェント2人がいつの間にかいなくなってしまった。


 さすがに放っておくわけにもいかないので、どこにいったか探すことにした。少なくとも地下3階の様子を確認する前までは俺の後にいたので、2人がいなくなったのは、地下3階で俺が扉を開けて以降のはずだ。


 再度地下3階まで階段を下り、また俺が前に出て扉に手をかけ一気に開いた。


 さっき見たときには、空っぽの駐車場だったが、今度は駐車場の真ん中辺りに1台の黒塗りの大型車が停まっていた。


「バイザー、ちょっと見てみろ。車が停まっている。あの車って見覚えないか?」


 俺の後から駐車場に入ってきたバイザーに俺が尋ねた。


「ナンバーを覚えていないので私達が乗ってきた車と同じかどうか分かりませんが、あの車にそっくりなことは確かです」


「いってみよう。俺もおちゃらけた格好はよしてそろそろ本気モードだ。

 装着!」


 俺はダークサンダーを着込んだ。のだが、今まで着ていた修道女のコスプレ衣装が実に邪魔だ。特にロングスカート風の上っ張りとその下に着ている白いワンピース。その2つが妙な具合に股のところで左右に生き別れて股間が妙に引っ張られる。そのうえ、頭に巻いたスカーフとベールがヘルメットの中で微妙に邪魔だ。妙なお茶目心など出すんじゃなかった。


 とはいえ、今更ここで着替えるわけにもいかないので、我慢することにした。


 1台だけ停まっていた車のそばまでいき、中を覗くと、誰もいなかった。そのかわり、バイザーのメイスが入っていた箱が助手席に置いてあった。やはり俺たちの乗ってきた車だ。


「運転手はどこいった?」


 運転席のドアを開けて中を見たが、変わったものは何もなかった。ただ、キーは挿し込んだままだった。


「うーん。一転してミステリー風味を帯びてきたな。

 バイザー、お前車を運転できるか?」


「うまくはありませんが、一応」


「試したいことがあるから、バイザー、お前この車を運転しろ。

 メッシーナとフラックス、車に乗れ」


 バイザーが運転席に乗りこみ、メッシーナとフラックスが2列目、俺が3列目に座った。


「バイザー出してくれ」


「どちらにいけば?」


「地上への出口に向かっていってくれ」


 俺の言葉と同時に車がえらい勢いで走り出した。


 スリップ音を響かせて、カーブを切った車はそのまま出口方向のランプウェイに突っ込んでいった。


「おい、バイザー、運転が荒くないか?」


「車が少々壊れても、私は平気なもので。少し運転が荒いと他の者にも言われています」


 ある程度は自覚しているらしい。俺もフラックスもこの車がクラッシュしようがなんともないが、メッシーナはそんなことは無いので少し心配だ。それでもメッシーナの場合、おそらくまたあの謎の力が働いて無傷に事故を乗り越える可能性が高いような気もする。


 車はらせんを描くランプウェイをえらい勢いでカーブを切りながら上っていくのだが、地上の出口はおろか、地下2階からの合流口もなかった。


 俺はカーブを切り続ける車の3列目のシートで横Gで転がらないよう踏ん張りながらも器用にふんぞり返って、


「俺の思った通りだっただろ」


 と、言ってやったのだが、そもそも俺はこれから何が起こるかなど考えてもいなかったし、当然みんなに一言も言ってなかった。とはいえ、こんなものは言ったもの勝ちだ。


「女神さま、この先どうなるんでしょうか?」


 バイザーが必死に運転しながら俺に聞いてきたのだが、それは俺だって知りたい疑問だ。


 どこまでも続くランプウェイ、言い方を代えると出口のないらせんの坂道を車が驀進していく。


「バイザー、キリがないというか、そのうちガソリンもなくなるだろうから、別の方向から攻めてみよう。いったん車を止めてくれ」


 バイザーが車を斜面に止めて、サイドブレーキを掛けた。


「いったん車から降りるぞ。バイザーはメイスを忘れるなよ」


 全員が車から降りたところで、いつものようにダークサンダーのベルトに擬態しているコロに、


「コロ、この車を全部食べてくれ」


「女神さま!」


 バイザーが俺を止めようとしたが、俺を止めてもコロの触手は止まらないので、目の車はあっという間にコロに食べられてしまい消えてなくなった。


「女神さま?」


「あれっ? 車が怪しいと思って、コロに食べさせてみたが、なにも変化がないな。

 仕方ないから歩いて戻るぞ!


「そ、そうですね」


 みんな文句を言わず俺の後をついて坂道を下っていく。



 これが平等とか、個人がとかいう妙ちきりんなコミュニティー内で発生したトラブルなら、和を乱す者が必ず現れ、コミュニティーそのものが機能しなくなるのだが、女神さまと下々の者で構成されたこのコミュニティーでそのような不平分子は現れない。もし現れても即刻俺がパージしてしまうのでコミュニティーの強靭さは圧倒的だ。これこそ、俺が求める『神の国』の一つの完成形でもある。


 などと考えながら坂道を下ってはや1時間。


「女神さま、そろそろランプウェイの入り口まで戻ってきていると思いますがどうなんでしょう?」


 と、バイザーが俺に聞いてきたのだが、俺だって知りたい。


 出口はまだなのか?




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