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第84話 巨大悪魔2


 俺はドームの被り物を剥ぎ取ってやろうと、純粋な好意からドームにエクスキューショナーを突き刺したまま周りを1周してやった。当然俺の後ろをトルシェがついてきている。


 フー。これでこのドームも立派な大人になったはずだ。まさに親心。


 1周し終ったところで、ドームの表皮が下からめくれ上がり始めた。


 表皮の下はスポンジ(かいめん)かと思ったが、表皮がめくれたあとから現れたのはゼリー状の何かだった。


「まさか」


 どうも悪い予感がする。そうだ! こういう時はちょっとだけ食べてみればいいんだ。


 ゼリーを少しだけエクスキューショナーでそぎ取った俺は、ヘルメットを少し上に上げて、口に入れてみた。


 エグイ! そして、マズい! 俺はその場に吐き出してやった。


 確かにこれは悪魔のコンニャクだ!


 このドーム自体が悪魔だったわけか。上についていたピンクの突起は角だろう。1本角で角の色が黒くなかったということは、こいつは低級悪魔と考えていいな。


 低級悪魔にしてはデカいが、悪魔界にも栄養過多で大きくなるやつがいてもおかしくない。あとでサティアスにその辺りを聞いてみればいいな。


 そんなことを考えていたら、悪魔の表皮がどんどんめくれ上がっていき、とうとう限界までめくれて、ドームの上に帽子のように乗っかてしまった。


「ダークンさん、このブヨブヨなんですか?」とトルシェ。トルシェの隣りにはいつの間にかアズランが立っていた。


「これが悪魔の中身だ。悪魔の体はコンニャクだった、といつか教えただろ?

 エグイしとても食べられたものじゃないけれど、お前たちも一口食べてみるか?」


 そう言うと二人とも頷いたので、エクスキューショナーで二切れコンニャクをそぎ落としてやった。


「エグイ!」「マズい!」お二人の感想も俺と同じだった。


「ペッ!

 とても食べられないけど、何かの役に立たないかな」と、コンニャクを口から吐き出したトルシェが言い出した。


 よく考えたら、こいつがここまで大きくなったということは、相当な数の魂を摂取していると考えられる。普通なら、レベルアップするところを、こいつは体積に変えてしまったようだ。


 ならば、このコンニャクの中には魂のエッセンスが入っている可能性がある。万能薬もトルシェのヒールオールも病気やケガには絶対的効力があるが、人の寿命を伸ばしたり、若返らすことはできない。


 このコンニャクを加工してどうこうすれば、不老不死薬が作れるかもしれない。ただ、不老不死薬が本当にできてしまうと神さまのご利益が激減してしまうし、何より、わが国の年金財政が完全に破綻してしまう。少しだけ長生きできて少しだけ若返る。そんな薬が理想だ。


 さらに言えば、俺の神通力を使わなくても、その薬をエサに神の国計画を推し進めることもできる。


「なあ、トルシェ、このコンニャクはおそらく人の魂を栄養にしてここまで大きくなったと思うんだが、これを材料にして、寿命を伸ばしたり若返らせたりする薬ってできないかな?」


「面白い考えですね。こいつをキューブに仕舞って持って帰って研究してみます」


「期待してるぞ」


「ダークンさん、私たちにはそんな薬は必要ないと思うけど、何に使うんですか?」と、アズラン。


「若返り薬とか長寿薬をエサにすれば人は飛びついてくると思わないか?」


「なるほど。神の国計画のために使うってことですね」


「そういうことだ。ワッハッハッハッハ」


「アッハッハッハ」


「フッフッフッフ」


 三者三様に大笑いをしてしまった。


 笑っているあいだにも、トルシェが魔法でコンニャクを切り刻み端からキューブに詰めている。


 5分ほどでドームはを残してすっかりなくなってしまった。


「皮だけ残ったがどうする?」


「新生児のあそこの皮は培養して再生医療に役立てていると聞きました」と、アズラン。


「俺には初耳だが、こいつはどう見ても新生児のあそこの皮には見えないぞ」


「ダークンさん、こいつを使って文字通り人造人間のスキンにしてしまいますか? 今人造人間たちに貼り付けているのはデジタル機器でも撮影できる改良型テクスチャーだけど、実体のあるスキンなら中のスライムを覆えるので人の体型を維持するためのスライムの負担も減って人造人間としても今より高性能になるかも」


「それはいいな。

 俺もそのうちテレビを通して国民に祝福を与えようと思ってたんだが、今のままじゃテレビに映らないからそのスキンを使った被り物を被ればデジタルで映像化できるんじゃないか?」


「ダークンさんがスケルトンだった時は、コロちゃんで試して大変なことになったけど、今はダークンさんにもちゃんとした肉もついているからうまくいくと思います」


 そこで、トルシェが大きく息を吸って、


「フッフッハー。フッフッハー。

 このスキンも元が悪魔だからそのままは使えないかもしれないけれどなんとかなるでしょ」


 トルシェの隣りに立つアズランは真っ赤な顔をして笑いをこらえている。俺がまだスケルトンだったころ、戯れにコロを薄く延ばして体全体にすっぽりかぶってみたのだが、確かにあの時の黒いコンちゃん姿は他人ひとに見せられないほどひどかった。(注1)


「できれば儲けものだ」


「それじゃあ、こいつも収納しておきます」


 トルシェによってスキンも収納されて、荒野だけが残った。




注1:

『闇の眷属、俺。~』第107話 ゴム人間 https://ncode.syosetu.com/n6512gg/107/

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