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第81話 お宝


 階段の踊り場に出ると、バタバタと上の方から人が大勢降りてくる音が聞こえてきた。


 下を見ると、地下方向に3階分続いている。上から下りてくる連中の相手をするのはいいが、どうせ雑魚しかいないので面倒なだけだ。


「どうせやってくるのは雑魚しかいないだろうし、めんどうだからコロに任せて、踊り場から踊り食いさせるか」


「ですね」「賛成!」


「コロ、そういうことだから、上から近づいてくる連中を残らず食べちゃってくれ」


 ダークサンダーのベルトに擬態中のコロがわずかに俺の腰を締め付けた。気がする。


 すぐにコロから無数の触手が上に伸びていき5秒ほどで、階段を駆け下りる音がしなくなった。さすがはコロ。


「それじゃあ、上っていこう」


 30階程度のビルだ。1階当たり階段が20段としても高々600段、俺たちにとっては楽々だ。


 最上階に眠る?お宝目指して俺たちはルンルン気分で階段を上っていく。階上からゆっくり下に向かって漂ってくる瘴気が、俺たちの気分をいやがうえにも沸き立たせる。


 軽いステップで階段を上っていたら、あっという間に最上階についてしまった。


 階段の踊り場から、ワクワクしながら扉を開けたら、いきなりマシンガンの銃撃を受けてしまった。これが普段着状態だったらおそらく俺の着ているものは下着を含めて吹き飛んで今頃俺はマッパだったろう。


 それくらい激しいお出迎えだったが、ダークサンダーに弾かれた鉛玉がそこらに潰れて落っこちただけで何ともない、強いていれば、何十丁もの機関銃の発射音で耳が痛くなったくらいだ。


 機関銃といってもトルシェに命中すればある程度のケガをする可能性があるが、トルシェは扉と俺の陰に隠れて機関銃の射線から外れていたらしく何事もないようだ。アズランは放っておいても機関銃の弾が当たることはないので心配無用だ。心配無用どころか、さっきまで俺の後ろにいたハズのアズランは既に目の前で機関銃をぶっぱなしている連中の後ろに立っていた。


 コロに食べさせてもいいが、せっかくアズランが出て行ったので、アズランに向かって俺が軽く頷いてやった。


 機関銃を撃っている連中は15人ほどだったが、俺が頷いて、首を上げた時には、そいつらの首から上が床に落ちていくところだった。


 距離的には微妙だったが、そいつらが倒れながら首元から吹き上げる血しぶきを浴びることはなかった。


「コロ頼む」


 とはいえ、床が血だらけになったのでコロに掃除を頼んできれいに片づけた。


 最上階のフロアーの瘴気の強さは圧倒的だった。


「フー、ハー」「スー、ハー」「スッスッ、ハー」


 3人揃って濃いヤツを胸いっぱい深呼吸してしまった。ついつい顔がほころぶ。


 ちょうどエレベーターの扉の正面になるよう分厚い両開きの扉があった。瘴気がそこから漏れているのでお宝の位置はバレバレだぞ! 隠しているわけでもなさそうなのでバレるバレないはないかもしれないがな。


 で、その扉なのだが、何だか扉に左右3段になるよう6つのレリーフが刻まれていた。結構な値打ちものに見える。


「トルシェ、なんだかそこの扉、よさげに見えないか? もらって帰るか?」


「そうですね。気密扉に加工して瘴気サウナの扉にしてしちゃいましょう」


「それじゃあ、壁の蝶番部分をコロに食べさせて蝶番ごといただこう。

 コロ、頼む」


 すぐにコロが扉の蝶番を留めている壁の一部を食べてしまった。蝶番が壁から外れてこっちに向かって倒れてきた2枚の扉をトルシェがキューブに収納してしまった。


 扉がなくなった先は大広間になっているようだ。問題は、扉がなくなったとたん腐臭が襲って来たことだ。俺自身はかつてグチュグチュのゾンビーだったこともあり、腐臭に耐性があるが、トルシェとアズランには俺ほどの耐性はない。


「うわっ! 目が痛い。うぇ」「キッツーい! うっ」


 二人して嘔吐えずき始めてしまった。しかも、アズランの肩に止まっているフェアまで蒼い顔をしているように見える。


 これまでこれほどのダメージを受けたのは魔神『黄昏のアラファトネファル』戦以来なかったはずだ。


「困ったな」


 取りあえず、


「トルシェ、ヒールオールだ」


「うぇ、ヒールオール! ふう、なんとか、でもまだキツイ」


「我慢してアズランとフェアにもヒールオールをかけてやれ」


「ヒールオール」「ヒールオール」


「吐き気は収まったけど、もうダメです」


 アズランが弱音を吐くとは珍しい。


「わかった。俺一人でお宝を取ってくるからお前たちはいったん階段の踊り場まで下がっていろ」


「「はい」」


 二人は階段の踊り場に下がって扉をバタンと閉めた。よほどキツかったようだ。俺は、目前の大広間の中に一歩入った。


 大広間の中は、赤黒い何かが床や天井でうごめいていた。足元の床は泥を踏んづけた感じでブーツのくるぶしまで埋まってしまった。照明はどこにもない。その赤黒い何かが臭いの元のようだ。目を凝らすと、人の顔のようなものや手足のようなものが表面に浮かんでいる。肉となった人間が融合して腐っているのか? 俺は何ともないがグロ耐性がないやつがこれを見れば気が狂うかも知れない。それほどおぞましい。


「コロ、なんだかわからないが、その赤黒いのを食べてくれ」


 俺の足元から瞬く間に部屋中の赤黒い腐臭の元が消えていった。


 臭いの元がなくなったといえども臭いは健在だ。空気を一度に入れ替えれば何とかなりそうだが、そういったことはトルシェなら簡単だろうが俺にはできないので、今は無理だ。


 臭いはあるが一応きれいになった大広間の先には一段高くなったステージのようなものがあり、その真ん中に祭壇のようなものが置いてあった。祭壇の上には真っ黒い何かがいた。今のところ瘴気の元が祭壇なのか、その真っ黒いなにかなのかは不明だ。


 俺が祭壇に向かって歩いていると、真っ黒い何かが大声を出した。いや、声が頭の中に響いた。


『われの祭壇を汚すのは誰だ?』


 いやいや、汚したんじゃなくてきれいに掃除したんだぞ。いずれにせよ、俺しかいないだろ! こいつバカなのか?


「目の前の俺が見えないのか?」


『? お前は? お前はどこかで見たことがあるぞ』


 俺もなんだかこいつの気配を覚えているぞ!


「おい、お前。まさか俺のペットだったサティアスじゃないだろうな?」


「えっ!?」




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