表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/109

第78話 メッシーナとスティンガー


 メッシーナを成都に連れていくにあたり、ナイフの腕前は少しは上達したのか本人に聞いたところ、スティンガーに何か謎の力(・・・)が働いているようで、ほとんど練習していないという。スティンガーの特性は刺突時防御力無視の貫通くらいだったはずなので、スティンガーを使うメッシーナの動きを対面で確かめることにした。


「メッシーナ、俺はダークサンダーを着るが、武器は使わない。どこからでもかかってきなさーい」


 余裕の上から目線である。挑発したつもりはないが、俺のその言葉でメッシーナが不意打ち気味に手にしたスティンガーを一気に突き出してきた。


 案の定メッシーナのナイフは及び腰で刃先もフラフラした突きだったが、まだ俺はダークサンダーを着ていなかったので、飛び退きながら急いで『装着』と頭の中で唱え、ダークサンダーを普段着の上に着けた。コロはダークサンダーの隙間から染み出てダークサンダーのベルトに擬態した。


 後ろに二歩ほど下がった俺に対して、右手を突き出して踏み込んだハズのメッシーナの足がもつれ気味になり、そのままよろよろと前に進み、ダークサンダーを装着し終わった俺の胸元にスティンガーの刃先が当たってしまった。そこで、スティンガーの特性『刺すことで、防御力を無視して貫通』が発動しダークサンダーを刺し貫いて俺の胸にまで刃先が届いた。


 俺自身何ともなかったが、ダークサンダーの下の普段着に孔が空いたはずだ。もし、ここで貫通していなかったらダークサンダーの特性、近接攻撃完全反射が発動していくらヘナヘナの突きといえどもメッシーナは手首を痛めていたかもしれない。運のいい(・・・・)ヤツだ。


 ただ、今のヘナヘナの突きをこの俺が受けてしまったのは納得がいかないというか、ちょっとだけ不思議ではある。メッシーナが言っていたように勝手にスティンガーが俺に当たったような気がするが、そんなことってあるのかね。もう少し様子を見て判断するか。


 その前に、不意を突いたヘロヘロ攻撃であれ俺から一本取ったわけだから、


「今の不意打ちっぽい攻撃はなかなか良かったぞ」


 不意打ちや目つぶし、急所蹴りといった卑怯技は大切な技なので、余裕で褒めてやった。


 メッシーナが無言でスティンガーを引いたときにはダークサンダーに空いた孔は塞がっている。この調子でダークサンダーの下に着ている普段着に空いた孔も直ってくれればいいのだが、結構な値段で買った服でもタダの普段着にそんな機能は付いていないよな。


「今度は俺の方は軽く右手でジャブを繰り出すから、それを躱しながら攻撃してみろ」


 メッシーナが頷いてナイフを構える。

 

 俺が腰の引けたメッシーナに向かって軽くジャブを繰り出す。もちろん当てるつもりのないテレフォンパンチだ。


 俺のパンチをメッシーナは大げさにける。相変わらず、体幹がブレているので動きがアンバランスだ。そしてなぜか足がもつれてしまう。


 大丈夫かな? これじゃあ連れていけないぞ。


 よろめきながらもなんとか踏ん張ったメッシーナに向かってまた右手でジャブを繰り出す。最初のパンチよりもさらに手加減した遅いパンチだ。


 メッシーナはそのパンチが目に入らなかったのか、構わず俺の方にスティンガーを突き出してきた。突かれてしまうとまた、防御力無視が発動するので、躱す必要があるのだが、そこで自爆気味に突っ込んできたメッシーナが俺のパンチに気づいたようで、体をのけ反らせてパンチを避けようとした。今度は体勢を崩して前進しつつ後ろに倒れるという器用なことをメッシーナはやってのけた。もちろんメッシーナはスティンガーを手にしたままなので、後ろに仰向け気味によろけたはずみでスティンガーが上向きに俺の延ばした右腕に向けて斬り上がってきた。


 スティンガーをはたいても良かったが、一応避けておいた。そこでなぜか俺の足が躓いて俺自身がつんのめり、気付けばスティンガーが俺の左胸の下辺り、俺に人並みの内臓があるとして、おそらく脾臓のあるあたりに突き刺さっていた。またダークサンダーの下の普段着に孔が空いたはずだ。


 なんじゃー?


 どうなってるんだー?


 もちろんトルシェの作った競技場の地面の上には足がつんのめるような凸凹はない。


 メッシーナの言葉通り確かに不思議な力が働いている。


「メッシーナ、よくやったと言っていいのか分からないが、確かに何かの力が働いているようだ。ちょっとスティンガーを見せてくれるか?」


「うん」


 俺はメッシーナから手渡されたスティンガーを一応鑑定してみた。


名称:スティンガー

種別:ダガーナイフ

特性:刺すことで、防御力を無視して貫通。命を奪うことにより強化される。命を奪うことにより使用者の気力・体力を回復。自己修復

特殊:一撃死


 以前と変わってはいない。特殊特性として「一撃死」があることをすっかり忘れてた。俺に一撃死が通用するとは思えないが、相手がボス級でない限り、2、3割の確率で一撃死が発動し相手は即死する。


「スティンガーのせいじゃないな。メッシーナ自身に何か特殊な能力があるようだ。自分では気づいてないんだろうから、俺が鑑定してやろう。どれ」


種族:人間

種族特性:なし。次の進化先なし。

職業:なし

祝福:『常闇の女神』の祝福

加護:『常闇の女神』の加護


 この中で、可能性のあるのは俺の加護か。適当にメッシーナに加護をくれてやったのだが俺自身、俺の加護にどういったご利益りやくがあるのか全く知らんからな。俺の加護によってメッシーナに何だかわからない特殊能力、どうも運にまつわるような能力が備わったのだと思っておこう。これなら成都に連れていってもいいだろう。



「メッシーナ、どうやら俺の加護のおかげでおまえ自身に妙な能力が備わったようだ。なんていうか戦いにおいて異常な『運』が発揮されるような感じだ。今のままでもいいかもしれないが『運』に頼ってばかりでは不安だから、そういうもんだと思って、気にせずナイフの訓練をしておけ。能力が発揮されれば相手がどんなに強くともお前が勝ってしまいそうだから、素振りとかそういった基本だけでいいかもな」


「分かった」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ