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第76話 俺(めがみ)さまの千年王国


 アズランによる、ターゲットと人造人間の取り換え作業も順調に進んでいるようだ。5月の連休が明けたところで、各テレビ局の主要な人物、20名ほどが人造人間に入れ替わっている。民放キー局だけでなく国営放送も例外ではない。


 そういえば俺がこの世界に帰ったのは4月1日の四月バカの日だった。それから一月ひとつきちょっとしか経っていないが、ずいぶん濃い生活を送った気がする。


 新宿に一人で出かけた時、ウィークデーにもかかわらず、中高生と思われる連中が沢山いて、俺の不在中(じゅうすうねん)で不良が増殖したのか、それとも休日がまた増えたのかと思ったが、何のことはない。春休み期間だったようだ。


 その勘違いが、ダークン・ユーゲントにつながり、最終的に秘密結社三人団が発足したわけだから、ケガをしてないかもしれないが、この国にとってはケガの功名となるわけだ。



 トルシェとアズランに言わせると、ターゲットと人造人間の取替作業より、ターゲットの情報を集める下準備の方が大変だったようで、準備の終わっていた最初の5人は半日ほどで取り換えたが、しばらく間が空き、最初の5人の状態をフィードバックさせた6人目以降15人を2日ほどでまとめて取り換えたようだ。


 大陸中国からは2組目のエージェントがやってきて以来音沙汰なしだ。頭のおっさんの話しぶりからだと、エージェントの数はそこまで多くなさそうだし、弾切れかもしれない。この連休が明けたらいっちょ、成都までいってみてもいいかもな。



「テレビ番組を俺は見ていないのでわからないが、どこか番組で変わった感じはないか?」


 リビングでよくテレビを見ている涼音に聞いたところ、


「そうですね。ニュースショウといって午前中や昼過ぎ辺りに各局で情報番組()なものを流していたんですが、月が替わって5月に入り、ほとんどの局でMC(メインキャスター)がほかの人に代わっています」


「なるほど、変な色の付いたタレントは番組で使うなと言っていたから、効果があったようだな。プロデューサーなんかもどんどん降格したり首にしているとトルシェが言っていたが、なかなかいいじゃないか。俺はバカになりたくないから、そのくらいの変化じゃテレビは見ないがな」


「これから先のテレビ番組は、どうなっていくんでしょう?」


「これからのテレビは時代劇の再放送と深夜アニメが主流になると思うぞ。この2大柱こそが日本の放送文化そのものと言えよう。あと天気予報とテレビ体操があれば十分だ」


 大きなことを言ってはみたが、少なくともここ十数年アニメも時代劇も見ていない俺が、放送文化を語るのはかなりおこがましい。しかし、この意見に賛同する者は多いはずだ。なんなら、これも選挙の予行演習のつもりで、テレビの画面を通じて国民を祝福してやってもいぞ。そうすればテレビを見た連中限定ではあるが俺の意見に大賛成するはずだ。通常は『闇』の祝福だが、『アニメと時代劇』の祝福だ。


 そんなことをやってしまうと、俺の権能に『アニメ』と『時代劇』が加わってしまうかもしれない。そんなところを、どこかの鑑定持ちの神さまに鑑定されたら赤面ものだな。



「そうそう。数日前、あるテレビ局の契約社員が犯罪を犯し逮捕されたニュースが当のテレビ局から真っ先に流れ、1時間後に社長の謝罪会見がありました。迅速な対応でその局はかえって評価が上がったようです」


「いままで自社内の不祥事は隠ぺいしていたんだろうから、オープンになって普通の企業並みになっただけでも世間さまは評価してくれるんだ。甘いな」


「それでも大きな進歩です。なんだか、少しずつこの国が良くなってきているのかもしれませんね」


「そのつもりで俺たちはやっているわけだからな」


「そういえば、都議会議員選挙が6月(らいげつ)末に行われますが、白鳥麗子さんは赤羽に住んでいたそうだから、住民票を移していなかったら立候補できるのでは?」


「同じ都内だから移していても被選挙権はあるかもしれないが、その前に、都議会も立候補できるのは確か25歳以上だったと思う。そういうわけで、白鳥麗子は当分の間プータローだ。どうせ今もノートパソコンにかじりついてるだろうから、選挙に出た時、どういった演説をブツのか不安でもあるし楽しみでもある。

 腐女子層の票は固いだろうから、全国区ならかなりの票が集まると思うが、まだ全国区に立候補できないし。地方選挙ではまだ難しいだろう。都知事くらいなら、ワンチャンあると思うが、確か知事選挙は30歳以上だったはずだ。

 そう考えると、選挙に出るのも案外制約が多いな。30歳過ぎていればある程度の分別が付くだろうという前提の話なのだろうが、そうでもないない都道府県知事くびちょうが沢山いるんじゃないか?」


「素人の私でさえ、SNSなどを通じて、県民のための政治なのか疑問に思うような人も何人かいますから、年齢制限だけでなく、ある程度の試験をして合格した人が立候補できるようにした方がいいんじゃないでしょうか?」


「そうするとな、その試験問題ができなかった連中は問題が偏ってるとか言い出すんだよ。

 試験は無理としても、任期終盤にはその期間の総括、具体的な数字で評価することは必要だよな。そうすればダメな奴ははっきり分かる。

 そういったもろもろも、もう数年の辛抱だ。この国が俺のものになったら、手も空くから、この国にとって有害と思える首長は、人造人間に交換してもいいし、対立候補を立てて、対立候補を当選させるよう有権者を祝福してやることもできる。何とでもなるから安心しろ。地方から中央まで俺の思いのままだ。これぞまさに神による絶対独裁政治だ!」


「独裁されるのですか?」


「指示は出すが、俺が表に立つわけじゃない。俺はあくまで秘密結社三人団の団長だ。かなりの数の政治家が清く正しい人造人間に置き換わるのだから、どう考えてもこの国の行く末は安泰だ。しかも有力官僚まで人造人間で占めるわけだからな。

 今までは司法については何も考えていなかったが、俺から見て(・・・・・)目に余るようなら裁判官と検事も対象にするのもありだな。見た目はこれまで通り三権分立だが全て俺の意思に沿って動く三権統合だ! しかも、メディアまで抑えている。俺自身の寿命がどれほどかは分からないが、100年や200年ということはないはずだから、まさにめがみさまの千年王国の出来上がりだ」




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