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第72話 オンリーワン、これすなわちナンバーワン

ここまで、お読みくださりありがとうございました。

一応ここまでで第1部終了ということにいたします。


 なんとか頭のおっさんから本拠地の所在地を聞きだした俺は、おっさんに向かって真面目な顔をして、


「約束した以上、俺は約束は守る。

 おっさん。俺はそのうちお前たちの本拠に出向いて叩き潰してやるつもりだが、そこにサティアス・レーヴァがいなければ見つけるまで時間がかかる。

 そこでだ。

 俺が今ここでお前を祝福すればお前はそのまま死んでしまい、そのかわり魂は救われると思う。どうする?」


「……、わかった。一思いにやってくれ」


 少し考えた頭のおっさんはとうとう観念したようだ。これまでどれほどの悪事を働いてきたのかは知らないが、女神の俺に捕まったことは本人にとって結果的には幸運だったのだろう。キリストと共にはりつけにされた二人の極悪人のうち、キリストと一緒に天に昇った右側の悪人のようなものだ。


「それじゃあ、お別れのサービスでそのザンバラ髪を切ってやろう。髪型はうまくできないが、今よりはましになるはずだ」


 コロに頭のおっさんの髪の毛をある程度揃えてやるように言って、食べさせた。整髪料もなければ櫛やブラシを俺は持っていないので、理髪店で髪を切った後のようにはいかなかったが、それでもある程度の格好はついた。


「すまんな」


「最期だしな。それじゃあ、最上級の祝福を与えてやろう。『闇の祝福』!」


 最上級の祝福といっても俺には祝福は『闇の祝福』しかないんだけどな。1つしかなければ必然的に最上級。オンリーワンこれすなわちナンバーワンだ。


 俺のかざした右手から例のごとく不可視の光線が放たれ、頭のおっさんが不可視ではなく金色の光に包まれた。俺の後光と同じ光だ。その光の中で少しずつおっさんの輪郭がぼやけていきそして消えていった。最期におっさんは笑っていたように見えたが確証はない。おっさんに繋げていたスライム製の肺の部分だけがおっさんを乗っけていたテーブルの上に残った。残った肺をどうしようかと思ったが、面倒なので、コロに食べさせた。同じスライムといっても最上級スライムのコロにとっては、人間が同じ哺乳類の牛や豚を食べるようなものなのだろう。



 大広間の隅でこういったドラマが進行していたわけだが、反対側の隅では、白鳥麗子が相変わらず身を乗り出して食い入るようにノートパソコンのモニターをのぞき込んでいた。


 陸上競技場の開け放された扉の先では、スポーティーなランニングウェアを着たメッシーナとフラックスがえらい速さで並んで走っていた。


 そして、その横の部屋では、金属製の帽子をかぶり椅子に並んで座った人造人間の仕掛品しかかりひんたちのまえでトルシェがなにやら作業している。いまのところ、仕掛品の数は20体ほど。俺の知らないうちに増えていた。


 トルシェがその中の1体の人造人間の頭から帽子を取って、頭を両手で持ち上げようとしている。


 あっ! 人造人間の首が抜けた! トルシェは抜けてしまった頭を横にしていったん台の上に乗っけて頭の付け根に空いた穴から中を覗いてまた元に戻した。何ともないらしい。人造人間の本体は俺が昔お世話になったオブシディアン・スケルトンだが、首がとれてもくっつければなんともなかったとは今まで知らなかった。


 お釈迦様が悟りを開いたのは、城の4つの門から人生のいろいろな局面を目にしたことがきっかけだったそうな。俺は女神さまだが、なんだかそのうち悟りを開きそうだ。




 あのエージェント3人組を斃し、頭のおっさんを送って3日ほど経った。残念だが俺はまだ悟りを開けてはいない。成都いきについては、いずれ向うの方からなにがしかの接触があるかもしれないし、もう少し落ち着いてからにしようということで後回しにしている。


 その間銀二がカードを届けてくれた。


「わざわざ届けてもらってすまんな、銀二」


「いえ、これくらいなんてことはありません」


「池袋の方はどんな具合だ?」


「大陸系の連中がいなくなったおかげで、元通り東側のシマも大川組に帰ってきました」


「それは良かったじゃないか。それじゃあ、お祝いに一杯やるか?」


「申し訳ありません。車できているもので。池袋界隈ならなんてことないんですが、この辺りは乗り慣れてないもんで」


「強要するようなもんじゃないからな」


「それじゃあ、あっしはこのへんで。みなさん失礼します」


「気を付けて帰れよ」


「へい」





 キャッシュカードとクレジットカードを銀二が届けてくれたので、住民票も含めて住所変更の手続きを済ませておいた。白鳥麗子の焼失したカード関係は来週になるのだろう。


 これで現金をあまり持ち歩かなくても済むが、そもそも現金を持ち歩いたところでキューブにそれなりの金額入っているわけだからそんなに面倒という訳でもない。まあ、ネットでの決済はクレジットカードがあった方が便利だろう。カードは二つとも会計担当のトルシェに渡しておいた。カードの暗証番号はどちらも1107だ。なんで1107かは察してくれ。



 カード類もそろったし、生活基盤もこれでほぼ完成したんじゃないかな。


「トルシェ、『神の国計画』の進捗しんちょくはどんな具合だ?」


「1号から5号までは、そろそろターゲットと入れ替えてもいいかもしれません。今日の昼までには5人をターゲットの容姿にしちゃいます。入れ替えのための移動中に裸だとマズいので、それ用の衣服も調達済みです」


「もうそこまでいったか。大したものだ」


「エヘヘヘ。1号から5号の様子を確認して6号以降にフィードバックさせてより良い人造人間に仕上げていきます!」


 トルシェが頼もしい。


「アズラン、ターゲットと人造人間の入れ替えの方はどうだ?」


「トルシェの準備が整い次第、ターゲットを入れ替えますから、ダークンさん、その時はコロを貸してください。今の話だと今日の午後からになるのかな。

 人目のないところで、ターゲットの衣服を残したままコロに処分させて、そのまま人造人間にその衣服を着けさせ入れ替えます」


 アズランも頼もしいな。ただ、ターゲットが人目のないところ、すなわち一人でいるところを捉えるのが難しいような気もする。


「ターゲットが人目に付かないところにいればいいが、そう都合よく人目の付かないところに一人でいるかな?」


「第1次となる今回の5人については、プライベートに適当にやってるみたいなので、簡単そうです。その他のターゲットも似たようなものだと思います」


「なるほど。人に言えないような場所に出入りすることもあるんだろうな。そこらは任せた」


「はい」



 それからしばらくして、かなり年配の男女ができ上った。今回のターゲット5人のそっくりさんのハズだ。


 男4人に女1人。皮膚のシミはもちろんのこと、年配のおっさんのアレの大きさや垂れ具合もトルシェが加工したものだし、年配のおばさんのアレの垂れ具合もトルシェが加工している。おそらく、全裸状態をアズランがどうにかしてデジタルカメラで写したのだと思う。すぐに5人は用意された衣服を着てスタンバイ状態になった。



 昼食を終えたら、アズランは腰にコロを巻き付けて、この5人を従えて地下駐車場に移動し、クロカン車に乗ってターゲットを順に回るのだろう。



 第1部(完)





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面白すぎる!適当にやっても何とかなる駄メ神の世直し珍道中!コロの役は「弥七?」そろそろ分裂してコロ暗殺軍団としてお葬慈本舗経営しないかなぁ?日本神や眷属との邂逅やバチカンぶっ壊しに期待!日本でのレベル…
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