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第70話 情報ロック


 俺は最後に一人だけ残った罰当たり男を前に、情報を引き出そうと話をしている。


「聞きたいのはお前たちの本拠地の場所だ」


「教えるわけないだろう」


 こいつのように悪魔に魂を売るような連中は、将来設計など何も考えず刹那的に生きていると相場は決まっている。と俺は思っている。そこで、その辺をつついてみることにした。


「お前、悪魔に売った魂は一体どうなるのか知ってるか?」


「……」


「それはな、悪魔に吸収されるんだ。消化されるともいえるが、悪魔の時間は人の数千倍もある。お前でもそれくらい知っているだろ? その時間の中でゆっくり消化されるわけだ。それも意識を持ったまま」


 俺は思いついたダークファンタジーを男に向かってそれらしく語りかけていく。


 俺の今の言葉にゴクリとつばを飲み込む音が聞こえてきた。アタリかな?


「俺に協力すれば、お前の魂は解放されるぞ。何となれば俺は悪魔を滅することができるからだ。お前たちの崇めるサティアス・レーヴァを含めてな」


 そこまで喋って俺はヘルメットを取り、後光スイッチをオンしてやった。


 俺の背後に広がる金色の光。


 その光を目にした罰当たり男が両手で頭を押さえて苦しみ出した。もしかして神の光は悪魔ないしその眷属に特効作用があるんじゃないか?『悪を滅する光!』なんてな。


 確認のため罰当たり男に後光で罰を当て続けたかったが、ほんとにこいつが死んでしまったら元の木阿弥なので、いったん後光スイッチをオフしてやった。そのかわり口調はこれまでとはがらりと変えてらしく(・・・)することにした。


「見たか。われの後光を!」


「お、お前はいったい何者なのだ?」


「われの名は『常闇の女神』。闇と慈悲を司る女神だ。悪魔などわれの前にはちりあくたに等しい」


「な、なんと、……」


「われの言葉を信じよ。悪魔に取り込まれた魂は、永遠とは言わぬまでもかなりの長い時間苦しみ続ける。それを救ってやろうというのだ」


「……。本拠地は大陸中国、街の名は、セ……」


 男が「セ」まで口にしたところで、いきなり青い炎に包まれた。罰当たり男は俺が罰を与えるまでもなくあっという間に跡形も残さず燃え尽きてしまった。


 それと同時に俺は涼音のマンションのリビングに立っていた。



「お帰りなさい。どうでした?」と涼音が、買ってくるように頼んだ食材が手に入ったのか聞くような感じで、先ほどの3人と一緒に俺が消えた後のことを聞いてきた。


「連中の本拠の場所を聞き出そうとしたが、そういった情報にロックがかかっていたようで、しゃべりかけた男は燃えて消えてしまった。残りの二人はその前に始末したので、結局3人とも始末してしまった。この3人組からの音信が途絶えるわけだから、2、3日したらまた何か動きがあるだろう」


「そうですか。あまり土足で上がらないでほしいですけどね」


 涼音は土足で汚れたフローリングの床とカーペットを今まで掃除していたらしい。


 そういえば俺もダークサンダーを着たままだったので土足だ。ダークサンダーはブーツだけ脱げないし、ブーツだけ脱げたらそれこそいい笑い者になってしまう。ブーツだけ脱いだ俺のダークサンダー姿を想像したらおかしくなったが、笑っても仕方がないし、居候の分際なのですぐにダークサンダーを収納して元の普段着姿になった。


「これは気付けず済まなかった」


「もちろんダークンさんは構いませんよ」


 命の恩神おんじんに対してはそうは言うわな。その言葉に甘えるわけにはいかないので、今度からは気を付けよう。具体的にどうするかと言えば、俺が玄関で体育座りでもして何か(・・)くるのを待っていればいいということだ。酒でも飲みながらなら十分可能だ。酒が無くなったら花子に持ってこさせばいいだけだしな。


 俺の今後の対応はいいとして、涼音が床掃除で雑巾がけをして腰を痛めても可哀そうだ。


「フラックスか花子に言って汚れを取ってもらえば掃除は早いぞ」


「そうなんですか?」


「ああ、あの二人の本体はブラックスケルトンだが、スライムがくっ付いているので、汚れだろうと何だろうとそのスライムがきれいに食べてくれる。そうそう、クリーニングよりきれいになるし、おそらく生地にも優しいから汚れ物が有ったら二人に綺麗にさせてもいいかもしれないぞ」


「さすがに汚れ物は」


「俺のコロでさえそんなことはまったく気にしないから、連中の体にくっ付いている下等なスライムだとそれ以上に気にしないので試してみろよ」


「それなら、今度試してみます」


「あれ? そういえば白鳥麗子は?」


「パソコンで勉強すると言って奥の方に行っているようです」


 白鳥麗子については今のところ遊んでいてくれて十分なので、好きにさせておけばいいだろう。


 連中の本拠地の場所を聞き損ねてしまったので、発声練習を続けているはずの頭のおっさんのところに行ってみることにした。


 奥の大広間に入ると、部屋の隅にパソコン用に机が1つ置いてあり、そこに白鳥麗子が自分で買ってきたノートパソコンが置いてあった。その正面の椅子にマウスを手にした白鳥麗子が座ってモニターを眺めている。モニターと顔の位置が妙に近い。こいつ近視だったのか? 後天的な近視ならトルシェに言えば治してもらえるハズだから後で白鳥麗子に教えてやろう。


 勉強中の白鳥麗子が何を見ているのか興味があって後ろまで歩いていき、俺が後ろにいることも気付かず白鳥麗子が一心にのぞき込んでいるモニターを見たら、2次元の裸の男が2人で絡み合っていた。


 こいつは『』だったのか。これまでのコイツの行動のいろいろなことが『』に落ちた。今度のしゃれはなかなかのものじゃないか?


 個人の趣味は趣味だからどうでもいいが、少しは政治について勉強しろよ。ハリセンがあれば後ろからひっぱたいてやるところだが、真剣にモニターを眺める白鳥麗子の後ろ姿を見ていたらバカらしくなって放っておいた。


 住所不定かつ無職、そのうち銀行からカードがここに送られてくるそうだが、それまでは無一文。現代貧困者層の権化のようなヤツだが、実に回復が早い。選挙に出た時のキャッチコピーは『貧困者層代表』が良いかもしれない。



 白鳥麗子は放っておいて、頭のおっさんの方に行ってみるか。




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